外国籍の就学不明児 見過ごすのは恥ずかしい - 毎日新聞(2019年1月20日)

https://mainichi.jp/articles/20190120/ddm/005/070/026000c
http://archive.today/2019.01.20-010605/https://mainichi.jp/articles/20190120/ddm/005/070/026000c

行政が放置してきた問題がやっと明らかになってきたといえよう。
小中学校に通う年齢にありながら、通学していない外国籍の子どもたちがいる。毎日新聞が外国籍の子どもが多い100自治体を対象に昨年行ったアンケートでは、全体の2割の約1万6000人に上った。
全国では、さらに数字は膨らむだろう。その人数の多さに驚く。
外国籍であっても本人が希望すれば就学できる。また憲法は、国民に対し子どもに教育を受けさせる義務を定める。ただし、外国籍の保護者は「国民」に該当しない。このため具体的な対応は自治体任せで、約4割の自治体は、不就学の子どもがいても、事実上放置している。
親の就労に伴い在留する0〜18歳の外国人は、2017年末で28万人超だ。今後も増加するだろう。学校に行かないまま成人すれば社会で孤立する要因になる。日本社会に適応する礎になるのが義務教育である。現状を見過ごすのは恥ずかしい。
不就学の背景に児童虐待があったケースもある。子どもの生命や人権を守る観点からも対応が急がれる。
住民登録している子どもが全国で最も多い横浜市や2番目に多い大阪市では、就学不明が1000人を超える。だが、住民基本台帳に基づき、学校に通っていない子に就学案内を送付するにとどまっている。
一方、全国で5番目に多い浜松市では就学不明児は2人という。同市は、日系3世に「定住者」の在留資格を認めた1990年の入管法改正を機に、南米からの移住者が急増した。長年かけて学校での日本語教育充実に取り組んできた。外国籍であっても地域社会の一員だとして、学校に来ていない場合、家庭訪問を繰り返し、就学を促しているという。
国が主導して就学不明児の実態をまず調べる必要がある。日本人の子どもが学校に通学していない場合、学校や行政、警察などが協議会を作って情報共有しながら対策を進める。そうした枠組みを生かして調べるのも一つの方法だろう。その上で、就学につなげる指針を示すべきだ。
教育の機会を提供するためには、受け入れ側の態勢強化も欠かせない。教師ら人員の増強や、子どもの日本語能力に応じた指導の工夫など検討を進めてもらいたい。