「やさしい日本語」 外国人にも伝わる表現を - 毎日新聞(2019年3月14日)

https://mainichi.jp/articles/20190314/ddm/005/070/098000c
http://archive.today/2019.03.14-124328/https://mainichi.jp/articles/20190314/ddm/005/070/098000c

日本語には実に多様な表現がある。ただ、それがかえって外国人とのコミュニケーションで障害になることがある。
そこで、平易な言葉に言い換える「やさしい日本語」の取り組みに注目が集まっている。
たとえば、学校の玄関の「土足厳禁」の張り紙は、「くつをぬいでください」とする。食事は「召し上がる」でなく、「食べる」。「救急車」は「病気やケガをした人を助ける車」という具合だ。
1995年に発生した阪神大震災後、弘前大の研究室が考案した。
神戸や阪神地区は、外国人居住者が多い地域だった。だが、都市防災研究所の調査では、日本人被災者に比べ外国人被災者は死傷者の割合が高かった。
住み慣れた外国人でも防災用語は難しく、避難に結びつかなかった可能性が浮き彫りになった。「避難」は「逃げてください」に言い換えることが提言された。
日本に在留する外国人は昨年6月時点で263万人を超え、統計を取り始めた59年以後最も多かった。訪日外国人は昨年、3100万人を超えた。4月には、新たな在留資格外国人労働者を受け入れる。
外国人の日本語能力には幅がある。政府は、昨年末に総合的対応策をまとめた。多文化共生の一環として日本語教育の充実や相談機関などでの多言語対応を掲げている。
もちろん、そうした施策は必要だが、一朝一夕には実現しない。
取りかかりやすい「やさしい日本語」を、防災だけでなく、行政サービスや教育、観光などに活用する試みが少しずつ浸透し始めている。
住民の5人に1人が外国籍の大阪市生野区は昨年、「やさしい日本語」を前面に打ち出し、区内の店舗を協力店として地域コミュニティーの拠点にする試みを始めた。
外国籍の就学不明児を少しでも減らそうと、東京都墨田区など学校現場で活用する動きもある。福岡県柳川市は、外国人観光客をもてなす手段として位置づけている。
日本人が「やさしい日本語」を使うことは、地域で暮らす仲間として、外国人を思いやる気持ちを示すことにつながる。外国人と日本人の間の垣根を低くする手段になる。