声を届ける - 北海道新聞(2019年1月18日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/267875
http://archive.today/2019.01.18-012431/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190118/KP190117ETI090004000.php

空知管内奈井江町の北良治・前町長は、市町村合併の是非を問う住民投票に合わせ、全国初の「子ども投票」を行った。2003年のことだ。対象は小、中、高校生たち。自分たちのまちを自分たちでつくるという、そんな思いだった―。退任後、本紙の取材に答えていた。
一方、こちらは参加したくてもできない住民が数多く出るのだろうか。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の賛否を巡り、沖縄県が行う県民投票である。沖縄市など5市が不参加の意向を示した。
県が市町村に交付する投票経費を盛り込んだ関連予算を、市議会が否決したことなどを理由に挙げる。否決されても首長判断で経費を支出できるが、各市長は議会の意思を尊重するとして不参加を表明した。
気になるのは、どの議会も保守系議員が多数を占め、首長が県と対立する国政与党に近い立場とされること。自民党衆院議員が、関連予算の否決に全力を尽くすべきだとする文書を市町村議に配っていたことも判明した。「全県投票」を阻止し、投票結果は県民の総意ではないと主張するつもりでは、と警戒する声すらある。
日本は間接民主主義が基本だが、市民の声が政治に届かないときもある。住民投票はそれを補う手法の一つだ。5市の判断は、住民が意思表明する権利を奪うことにほかならない。
民主主義が揺らいでいる。遠い沖縄の話と傍観してはならない。