(大弦小弦)きっと捜査便利帳のような存在だろう。検察が企業など…2019年1月7日

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きっと捜査便利帳のような存在だろう。検察が企業など約290団体をリストにし、個人情報を簡単な照会で入手する方法をマニュアル化している。共同通信が報じた

▼交通やクレジットカード会社から利用履歴を入手すれば、個人がいつどこへどう移動して何を買ったのかが追える。政府が旗を振るキャッシュレス決済が進めば、捕捉範囲はさらに広がる

▼捜査は迅速さが必要。しかし、多用される「捜査関係事項照会」は裁判所の令状がいらず、外部チェックの仕組みがない。過去には警察官が元交際相手の今を知るために使ったケースもあった

▼企業は顧客と捜査当局、どちらを向いて活動するのかが問われる。照会はあくまで任意。利用規約にも示さず、裏で応じるのは背信行為ではないか

▼市民の側も無意識にこうした行為を許してきた面がある。私自身、小さな字で書かれた規約を読み飛ばして入会し、情報を提供してきた。せめて企業ごとに姿勢を見極める努力をする。まず規約を読んでみる

▼プライバシーは誰にも干渉されずに自分でいられる空間であり、権利である。「私は悪いことはしない。何を知られても大丈夫」と言う人がいるかもしれない。ただ、何が悪いことなのかは力を持つ側が決める。だから基準は簡単に変わる。譲れない一線を考えておく必要がある。(阿部岳)