<税を追う>米優位のFMS 防衛大綱に登場 実現は米頼み - 東京新聞(2018年12月28日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000130.html
https://megalodon.jp/2018-1228-1021-13/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000130.html

米国の言い値で兵器を買わされているとの批判がある米政府の「対外有償軍事援助(FMS)」。政府が今月決定した新しい「防衛計画の大綱(防衛大綱)」や「中期防衛力整備計画(中期防)」に初めて、FMS取引の改善が盛り込まれた。米国製兵器の輸入が急増する中、価格が高く不透明というFMSの欠陥を無視できなくなったからだ。ただ、防衛省に秘策があるわけではない。改善は相変わらず米国頼みで、掛け声倒れで終わる可能性もある。 

 (「税を追う」取材班)

「調達の合理化を推進する」「装備品の取得や履行状況の適時適切な管理に努める」。大綱や中期防にFMSの改善が初登場したが、目新しい内容ではない。
防衛装備庁の調達部門の担当者は「大綱や中期防は防衛省の決意表明。そこに明記される意味はかなり重い」と受け止める一方、「現時点で、新たな改善策を持ち合わせているわけではない」と語る。
FMSを巡っては会計検査院から幾度となく、価格高騰の不透明さや納期の遅れが指摘されてきた。そのたびに米国に改善を求めているが、抜本的な解決には至っていない。この間、FMSによる兵器輸入額は契約ベースで、二〇一二年度の千三百八十一億円から一九年度は七千十三億円と大きく膨らんでいる。
「FMS取引が増え、日米双方でいろんな課題が共有されるようになった」。別の担当幹部は、変化の兆しを見て取る。
FMSの課題を話し合う日米のトップ級会議が、二年前に発足。今秋からは、兵器ごとの担当者会議の場で、米側に価格の内訳の提供を求めるようになった。
幹部は「まだ制約も多い。試行錯誤でやっている状態だ」と明かす。
新中期防で示された兵器購入リストには、ミサイル防衛システム「イージス・アショア」や戦闘機F35、早期警戒機E2Dなど米国の兵器がずらりと並ぶ。今後五年間でFMS取引はさらに増えそうだ。自民党国防族議員の一人は「現状の日本の技術力で作れない装備品は米国から買うしかない」とこぼす。
防衛省にとって賢い買い方ができなければ、自分の首を絞めかねない。航空自衛隊の元空将は「FMSは日本だけを相手にした制度ではなく、米国にとって最適と思われるやり方で運用する。日本との取引が優先されるとは限らない。大綱にどう書くかより、情報収集力と交渉力を強化する体制を作ることが大事だ」と指摘する。