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家族の変容や多様化に向き合うことなく、改革は再び先送りされた。
自民、公明両党は2019年度税制改正で、シングルマザーら未婚のひとり親への「寡婦控除」拡大を見送った。住民税軽減などでは合意したものの、税制の見直しという恒久措置には踏み込まなかった。
寡婦控除は配偶者と離婚したり、死別したりしたひとり親の所得から一定額を差し引き、所得税や住民税を軽くする仕組みである。現行制度は、さまざまな事情から結婚せずに子どもを育てるひとり親は対象としていない。
未婚の親に適用されないのは不当な差別だとの声は強く、昨年の与党税制協議会で19年度改正で結論を出すと決めていた。厚生労働省も「子どもの福祉を考えれば、親の結婚経験の有無を問わず経済的な支援が重要だ」とし税制改正を要望していた。
ところが19年度税制改正大綱で決まったのは、住民税が「非課税」となる基準の緩和と、低所得のひとり親に年1万7500円の手当の給付である。
これにより格差は一定程度解消するかもしれない。ただ当事者が望んでいたのは財政支援ではなく、法改正で真正面から寡婦の定義を変えることだった。
見送りの背景にあるのは、法律婚にこだわる伝統的家族観だ。税制改正議論の中で、自民党から「未婚を助長しかねない」との反対意見が上がったのは残念というしかない。■ ■
寡婦控除は戦争で夫を失った妻の生活を支えるため1951年に創設された。しかし現状は母子世帯になった経緯で「離婚」の次に多いのが「未婚の母」である。その割合は「死別」を上回っている。
NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が、未婚のひとり親を対象に実施したアンケートからは「妊娠を知ると男性が去っていった」「妻子がいた」など、多くが望んでひとり親になったわけではないことが分かる。
厚労省の2016年の調査では、未婚のシングルマザーの平均世帯年収は177万円で、母子家庭全体の200万円より低い。経済的に厳しい母子世帯の中でも、さらに厳しい状況に置かれているのだ。
未婚を選択せざるを得なかった事情や家計の苦しさを知れば、「助長」などという冷ややかな言葉は出てこないはずだ。■ ■
婚外子相続差別を巡り最高裁は13年、「家族観が変わり、相続分を差別する根拠は失われており、法の下の平等を定めた憲法に反する」との違憲判断を下した。
「子どもに選択の余地がない理由での差別は許されない」との決定は、未婚の親に寡婦控除が適用されず子どもに不利益を及ぼすのも合理性を欠く差別ということになる。
自治体が先行する形で保育料などの「みなし適用」が進んでいる。家制度の残滓(ざんし)ともいえる控除制度の改革は、国が率先して取り組むべき課題だ。