就労外国人 政府の準備不足 まともな質疑ができない - 毎日新聞(2018年11月22日)

https://mainichi.jp/articles/20181122/ddm/005/070/025000c
http://archive.today/2018.11.22-005211/https://mainichi.jp/articles/20181122/ddm/005/070/025000c

今国会の最重要テーマである入管法改正案の実質的な審議が衆院法務委員会で始まった。
外国人に対する入国管理政策を大きく転換し、いわゆる単純労働者に門戸を開く法案だ。論点は多岐にわたるのに、答弁に当たる政府の準備不足ばかりが目につく。
新たに創設される就労目的の在留資格は、現行の技能実習制度の存続をベースにしている。従来の問題点を把握し、改善策を講じることが議論の出発点となるはずだ。
技能実習をめぐっては、実習生が低賃金で長時間働かされるなどの問題が表面化している。野党の質問はそこに集中したが、政府は法務省内にプロジェクトチームを設置して検証すると答えるにとどまった。
失踪した実習生の聞き取り調査は実態の把握に有用だが、法務省の公表した昨年分のデータに集計ミスが見つかったのはお粗末だった。
しかも、実習生への人権侵害行為に罰則を設けた技能実習適正化法が施行された昨年11月以降も失踪は続いている。法務省は今年に入って2000人以上から聞き取り調査を行ったと明らかにしたが、なぜそのデータを国会に示さないのか。
これでは判断材料に乏しく、まともな質疑ができない。
さらに気になったのは、法務省が「担当省庁にお尋ねいただきたい」との答弁を連発したことだ。
外国人労働者を受け入れるに当たっては、労働環境のみならず、日本語教育や生活支援などの態勢整備も在留資格とセットで検討されるべきなのに、政府は年末に先送りした。
法務省は受け入れ態勢の検討作業で関係省庁間の総合調整に責任を負っている。その法務省が国会で答弁できないのなら、厚生労働や文部科学など複数の委員会による連合審査がやはり必要だ。
受け入れ人数を5年間で最大約34万人とした政府の見積もりをめぐっても、それを「上限として運用する」と答弁した安倍晋三首相と、「上限ではない」という山下貴司法相の見解のズレが整理されていない。
政府・与党は3日程度の委員会審議で衆院を通過させようとしている。国柄を変えるほどの法案であるにもかかわらず、ずさんな質疑で論点を消化できるはずがない。