(政界地獄耳)スタートから間違えた入管法改正 - 日刊スポーツ(2018年11月15日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201811150000229.html
http://archive.today/2018.11.16-000859/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201811150000229.html

★政府は入り口のアプローチから間違えたといえそうだ。入管法改正、事実上の移民法は本来、法務省が万全を期す陣容で国会に挑むはずのものが、お寒いほどのスカスカの内容で、つまり法案といえるものではない。移民または外国人労働力の安易で乱暴な受け入れ体制といえる。12日、国会内で「外国人労働者 野党合同ヒアリング」が開催され、6野党・会派の代表や国対委員長が出席し、4万人といわれる受け入れ見込み数や失踪技能実習生への聴取データなどの提出を求めたものの、法務省は見込み人数については「精査中」、聴取データ(聴取票)については「検討中」を繰り返した。

★時間稼ぎは結構だが、法務省は入管の拡大で省益拡大になる。喜んでいるか否かはともかくもこの強引な財界要求に応えようとする人手不足対策は、この合同ヒアリングに参加した17人の実習生の涙ながらの訴えを聞けば、徴用工の再来や現代の奴隷制度といわれても仕方がない。現行の外国人技能実習制度の実態、建前の制度の抜本的見直しは大前提になるだろう。7日の参院予算委員会で法相・山下貴司は「技能実習の反省に立って新制度を作っている」としたが、ブローカーの介入が奴隷制度につながる現実をどう対応するか。意図的なザル法が留学生を苦しめているはずだ。

★人手不足といいながら我が国の失業者は150万人。彼らをほったらかしにしたまま、それでも外国人を受け入れたいのは安価で使い捨ての労働力だと考えているからではないのか。また賃金体系も外国人労働者の水準に合わせて日本人の本給を下げる理屈に使われかねない。そもそも外国人労働者と言い張り、段階的に受け入れてきた移民の実態をいまだに認めない政府の方針の転換から、この議論はスタートしなければ意味がない。(K)※敬称略