実習生聴取で法務省「裏付け調査せず」参院審議 - 毎日新聞(2018年12月4日)

https://mainichi.jp/articles/20181204/k00/00m/010/284000c
http://archive.today/2018.12.04-160007/https://mainichi.jp/articles/20181204/k00/00m/010/284000c

法務省の和田雅樹入管局長は4日の参院法務委員会で、国内で失踪した外国人技能実習生から聞き取りした資料(聴取票)について「実習生から聴いた内容をそのまま書き取った。(受け入れ側には)調査していない」と述べ、聴取票に基づく待遇の実態を確認していなかったことを認めた。野党は聴取票の約67%が最低賃金以下だったと追及。外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案を巡り、政府のずさんな準備状況がまたも浮かんだ。
同省は2014年から、失踪の動機や月給などを実習生から聴取。17年の調査では、失踪動機を「(賃金が)最低賃金以下」だったからと答えた人が2870人中22人(0・8%)だったと説明していた。政府・与党が聴取票のコピーを拒否したため、野党は議員を動員し、手作業で書き写して独自に分析した。
山下貴司法相は法務委で「67%が最低賃金以下」という指摘を「重く受け止める」と述べ、受け入れ企業などへの調査を改めて指示したと釈明した。聴取票は「毎月必ずこの給料、毎月必ずこの時間働いていたことを示すものではない」とも反論。しかし受け入れ側に裏付け調査を行っていなかったため、同省は「(聴取票から)ただちに最低賃金以下だったとは認定できない」などと、あいまいな答弁を繰り返した。
今回の改正案は、技能実習の修了者が新たな在留資格「特定技能1号」へ無試験で移行し、日本での滞在期間を延長できる仕組み。山下法相は「しっかりと人権保護を図る」と理解を求めたが、立憲民主党有田芳生氏は「改正案の前提が崩れた。実態の総括を抜きに新制度などあり得ない」と追及した。
また山下氏は、企業が日本人従業員に離職を迫り、代わりに外国人を雇うことを禁じる規定を、改正案成立後に定める法務省令で盛り込むと説明。受け入れ企業に定期的な報告を求めるなどし、外国人に日本人と同等の賃金を支払っているかどうかもチェックするとしたが、野党は「書類を見ているだけでは絶対にチェックできない」(共産・仁比聡平氏)などと実効性を疑問視した。【青木純】