<税を追う>取引先1位は米政府 装備品、「言い値」で高騰度々 - 東京新聞(2018年10月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018102902000153.html
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防衛省の最大の取引先は国内企業ではなく、アメリカ政府−。安倍政権で米国の「対外有償軍事援助(FMS)」に基づく兵器導入が急増し、米国は二〇一五年度から三年連続で契約先のトップに立つ。「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」。兵器購入を迫るトランプ米大統領に応じてきた安倍晋三首相。だが、米側の「言い値」で決まりがちな価格など、米国主導の取引により、防衛予算の借金が膨らんでいる。 (「税を追う」取材班)
「安倍政権の米国製装備品の積極的な購入は、事実が物語っている」。今年六月の参院外交防衛委員会井上哲士(さとし)議員(共産)が防衛省から取り寄せた資料を基に切り出した。
地方防衛局分を除いた防衛省の装備品契約額。一二〜一四年度は国内最大手の三菱重工業が一位で、米国政府は一三年度の二位(千六十九億円)が最高だった。それが一五年度からはトップに居続ける。一七年度は三千八百七億円で、二位の三菱重工業に一千億円以上の差をつけた。
「(ミサイル防衛の)イージスシステムやF35A戦闘機といったわが国を守るために必要な装備品はFMSでしか調達できない」。小野寺五典(いつのり)防衛相(当時)はそう答弁し、「今後とも米国と連携する」と日米一体化を強調した。その一つが一九年度に契約予定の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」だ。
防衛省秋田市山口県萩市・阿武町にある二つの演習場に配備する方針で、価格は二基で計二千三百五十二億円。だが一九年度に支払うのは五十七億円だけで、残る二千二百九十五億円は二〇年度以降、四年に分けて支払う。
北朝鮮核兵器を放棄せず、対応策は必要だ」。元航空自衛隊空将の織田(おりた)邦男氏は地上イージスの意義は認めつつ、「米国は秘の部分は教えてくれない。問題は価格の中身が分からないことだ」と案ずる。

FMSでの兵器の取引価格は米側が見積もるため、値段は言い値になりがちだ。日本向けに部品を作り直すなどの理由で、当初の見積もりから価格が高騰することも度々ある。日本側が適正価格を検証するのは難しく、米側の圧倒的優位は動かない。
米国製兵器の導入拡大により、複数年度で支払う後年度負担(ローン残高)は急増。一九年度の支払いは国産を含め、二兆七百八億円と予算全体の四割を占める。これに人件費と糧食費を合わせると八割が固定的な経費となり、新たな装備品の購入などに使える「自由枠」は二割しかない。
防衛省では、予算の硬直化への懸念が広がる。ある幹部はつぶやく。「後年度負担に圧迫され、これ以上切り詰められないところまで来ている」

<イージス・アショア> イージス艦に搭載している迎撃ミサイルを地上に配備し、大気圏外で弾道ミサイルの迎撃を図るシステム。防衛省は2024年度ごろに山口、秋田両県に2基を配備し、日本全域のカバーを目指すが、強力なレーダー波による健康被害を懸念する声も出ている。

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