写真で平和の尊さ 見詰め直す アーツ前橋で「昭和の肖像」展:群馬 - 東京新聞(2018年7月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201807/CK2018072902000148.html
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横浜美術館の写真コレクションを紹介する展覧会「昭和の肖像−写真でたどる昭和の人と歴史」が、前橋市千代田町のアーツ前橋で開かれている。二十世紀を代表する報道写真家、ロバート・キャパ(一九一三〜五四年)が戦場で爆死する前の月、終戦後の日本で子どもや家族を捉えた作品などを展示。三十作家の計三百三十五点からは、戦争の爪痕や平和の尊さなどを見詰め直すことができる。 (菅原洋)
横浜は開港後に欧米文化が流入し、日本人写真師が初めて商業写真館を開業するなど国内の写真史で重要な位置付けにある。このため、同美術館は膨大な写真作品を所蔵している。横浜の開港後、前橋の生糸が横浜から輸出された縁もあり、アーツ前橋が展覧会を企画した。
キャパはハンガリーに生まれ、グラフ誌「ライフ」の特派員として欧州の戦場で従軍。死の危険が迫る極限下で一瞬を切り取り、報道写真史の伝説となる数々の名作を残した。五四年四月に来日して東京や京都などを巡り、五月にインドシナ戦線を撮影中に地雷に触れて死亡した。
展示しているキャパの作品は九点。いずれも写真家の弟が同美術館へ寄贈した貴重なプリントだ。大阪城で二人の少女が石の上で写生に没頭する姿やピクニックする親子などを収め、平和をかみしめるキャパの息吹を感じさせる。
アーツ前橋の山田歩(あゆみ)学芸員は「終戦から立ち直りつつある平和な日本を撮りたかったのでは。戦場のイメージが強いキャパに、こんな優しいまなざしもあったことを知ってほしい」と来館を呼び掛けている。
昭和で欠くことのできない戦争と原爆をテーマにした力作も多く、遺骨の山、被災した品々や人々を記録した重厚な作品からは平和を希求する作家の情熱が伝わってくる。
各写真賞を受賞している県内出身の石内都さんが、一時過ごした神奈川県横須賀市で撮った米軍基地の雰囲気が漂う作品も並べた。
展覧会は九月三日まで。午前十一時から午後七時まで開館しており、観覧料は一般五百円、学生など三百円、高校生以下無料。水曜休館。