https://ryukyushimpo.jp/column/entry-765483.html
http://archive.today/2018.07.21-010200/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-765483.html
西原町棚原で12年に1回開催される「酉年十二年まーるあしび」。最大の見せ場の組踊「雪払い」に、継母のいじめや虐待で家を追い出された娘が雪の中に放置される場面がある
▼激怒した父親は継母を斬り殺そうとするが、被害者であるはずの娘やその弟が許しを請い、継母は改心する。人を許す強さや優しさが感動を呼ぶ
▼現実はどうか。いじめや虐待は被害者の心に傷を残しかねない。事件や事故、犯罪は被害者やその家族、社会を恐怖に陥れる。厳罰を望むのは被害者感情として当然だし、復讐心を持つのも理解できる
▼不幸な事故で孫娘を失った男性を取材したことがある。男性は事故の関係者を「絶対に許さない」と敵視し続けた。数年後、男性に再会したが、怒気や憎悪がにじんでいた。温和な雰囲気はなくなっていた
▼ルワンダの大虐殺で家族を失ったイマキュレー・イリバギザさんの著書「生かされて。」に、家族を殺害した男と刑務所で対峙(たいじ)するくだりがある。「あなたを許します」。胸の張り裂けるような苦しみと悲しみを直視し、たどり着いたのが許すことで得られる心の平穏だった
▼ダライ・ラマ14世は許しについて「相手を無罪放免にする手段」ではなく、「自分を自由にする手段」と説いた。怒りや憎しみに身を任せるか、心の平穏を選ぶか。あらゆる物事と自分の心への向き合い方が問われる。