トルコ大統領選 文明の十字路であれ - 東京新聞(2018年6月27日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018062702000165.html
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トルコ大統領選でエルドアン氏が再選を決めた。権力を強化してメディア統制をさらに強め、独裁化を進める恐れもある。東西の両文明が交わる国。政治、安全保障上の要衝だけに気掛かりだ。
エルドアン氏はイスタンブール市長として行政手腕を発揮後、穏健イスラム政党、公正発展党を設立し、国政での権力掌握はすでに十五年に及ぶ。首相を三期務めた後、大統領に転じた。昨年の憲法改正で実権型大統領制に移行したため、今後は国会の解散権や最高司法機関のメンバーの任命権も持つ。三権分立がおろそかにされないか心配だ。
大統領選は一年以上前倒しして実施され、エルドアン氏は「強い指導者」の必要性を訴え、一回目の投票で過半数を獲得した。
しかし、選挙戦に対しては、欧州連合(EU)が「報道の自由が制限され、不公平だった」と疑問視する声明を発表している。
トルコは、政教分離を徹底してきた世俗主義イスラム国家。その守護者を自任する軍の一部が二〇一六年七月、クーデターを決行。未遂に終わったが、エルドアン氏は反対勢力一掃に乗り出し、イスラム色、強権姿勢を強めた。
今も続く非常事態宣言下で、政権に批判的な百八十の報道機関が閉鎖され、テロ関連容疑で百二十人以上の記者が収監されている。
言論も萎縮し、主要メディアの選挙報道は、圧倒的に政権寄りだったという。
対外的にも強さを誇示する。シリアの反体制派を支援する一方、クルド人勢力を攻撃する。
エルドアン氏の姿勢はロシアのプーチン大統領を想起させる。首相、大統領などと立場を変えながら強権政治を強化している手法は同じだ。欧米との溝が深まる中、似たもの同士となったトルコ、ロシアの関係は強まっている。
強権政治はEU加盟国のハンガリーポーランドなどでも広がりつつある。トランプ大統領が米国第一主義を掲げる中、リベラルな国際秩序は大きく揺らいでいる。
自由、協調など戦後世界を支えてきた価値観の意義を思い起こし、強権政治の広がりに歯止めをかけたい。
トルコは米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構NATO)のメンバーであり、EUの仲間入りも目指す、欧州とも密接な国だ。混乱する中東で、秩序を保つ数少ない大国でもある。難民問題での役割も大きい。懐深く文明をつなぎ合わせてほしい。