沖縄と米朝会談 負担軽減につなげたい - 東京新聞(2018年6月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018062602000166.html
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東アジアの情勢変化にもかかわらず、なぜ二十年以上前の新基地建設計画に固執するのか。米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への「県内移設」は強行せず、計画を見直すべきだ。
太平洋戦争末期、住民を巻き込んだ凄惨(せいさん)な地上戦の舞台となり、当時、県民の四人に一人が犠牲になった沖縄県。旧日本軍の組織的な戦闘が終結したとされる「慰霊の日」の二十三日、沖縄全戦没者追悼式が沖縄県糸満市で開かれた。
翁長雄志県知事は平和宣言で、普天間飛行場辺野古移設について「まったく容認できない。『辺野古に新基地を造らせない』という私の決意は県民とともにあり、これからもみじんも揺らぐことはない」と強調した。
翁長氏の平和宣言での辺野古移設反対表明は二〇一四年十二月の就任以来四年連続だが、今年、特筆すべきは今月十二日の米朝首脳会談に言及したことだろう。
翁長氏は「米朝首脳会談朝鮮半島の非核化への取り組みや平和体制の構築について共同声明が発表されるなど緊張緩和に向けた動きがはじまっている」と指摘し、「辺野古新基地建設は、沖縄の基地負担軽減に逆行するばかりか、アジアの緊張緩和の流れにも逆行する」と、辺野古移設を唯一の解決策とする政府を指弾した。
そもそも沖縄県には在日米軍専用施設の約70%が集中する。日米安全保障条約体制の負担を沖縄により重く負わせることで成り立ついびつな構造だ。住宅地などに隣接して危険な普天間飛行場の返還は急務としても、同じ県内に移設するのでは、県民にとっては抜本的な負担軽減にはならない。
さらに、東アジアの安全保障環境は大きく変化しつつある。安倍晋三首相が「国難」に挙げていた北朝鮮情勢は「安全保障上の極めて厳しい状況はかつてより緩和」(菅義偉官房長官)された。
冷戦終結間もない国際情勢下に策定された米軍の配置は見直されて当然だ。首相は「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」というのなら、なぜ米朝会談後の情勢変化を好機ととらえないのか。
政府は八月中旬に辺野古海域への土砂投入を始めるという。原状回復が難しい段階まで工事を進め既成事実化する狙いなのだろう。
しかし、県民の民意を無視して工事を強行すべきではない。政府は辺野古移設を唯一の解決策とする頑(かたく)なな態度を改め、代替案を模索すべきだ。それが県民の信頼を回復する「唯一の道」である。