官房機密費 いっそ廃止にしては? - 東京新聞(2018年1月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018012002000188.html
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官房機密費という謎のカネがある。最高裁は一部のみの文書開示を認めた。意義ある使途なのか疑わしく、かつ精緻なチェックも受けない。将来、全面開示する義務制か、いっそ廃止にしては。
会計検査院の対象となっているのに、領収書がないケースもあり、事実上、精密な使途のチェックができない。謎のカネだというのは、そういう意味である。内閣官房長官が管理し、官邸が自在に操れるカネだ。
正式には内閣官房報償費というが、官房機密費と呼ばれ、実態は不明なままだ。
ただ、小渕恵三内閣で官房長官を務めた元自民党幹事長の野中広務氏が二〇一〇年、共同通信の取材に対して官房機密費の内幕について語ったことがある。月々、首相に一千万円、野党工作にあたる自民党国対委員長参院幹事長に各五百万円、政治評論家や野党議員にも配っていたという。
共産党が〇二年に公表した機密費の使途では、野党議員の高級紳士服、政治家のパーティー券、議員が外遊する際の餞別(せんべつ)、ゴルフのプレー代、洋酒、ビール券など国政とは無縁の項目が並んだ。
そもそも機密費は、国内外の非公式な重要課題の解決のため、合意や協力を得る対価として使われる。情報提供者への謝礼などだ。その金額は毎年十数億円。一端とはいえ、使途はまともとは到底、言えない。目的から逸脱しているのは明白である。
一九九〇年代には外務省職員が首相の外国訪問の際に宿泊費の水増しなどで、約五億円もの機密費をだまし取った事件もあった。ずさんの証左ではないのか。
今回、市民団体が起こした文書開示を求めた訴訟で、最高裁は支払先や具体的な使途が明らかにならない明細書など一部文書の開示を認めた。だが、あまりに小さな「穴」だ。その「穴」から国民は何が見えるというのか。十億円ものカネが本当に秘匿に値する情報取得に充てられているのか。
「知る権利」がある。もっと実態が見えないと、権力と国民の間に緊張関係は生まれない。旧民主党が〇一年に、機密性の高いものは二十五年、それ以外は十年後に使途を公開する法案を出したこともある。それも一案だ。
いっそ機密費は全廃してしまえばどうか。本当に必要なカネは費目を明示し予算要求すればよい。議員の背広に化ける、謎のカネを権力の自由にさせておく余裕など国庫にはないはずだ。

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官房機密費、一部文書の開示認める 最高裁初判断 - 日本経済新聞(2018年1月19日)
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