(余録)近代憲法の「元祖」といえる中世英国のマグナカルタ(大憲章)は… - 毎日新聞(2018年3月7日)

https://mainichi.jp/articles/20180307/ddm/001/070/152000c
http://archive.today/2018.03.07-004139/https://mainichi.jp/articles/20180307/ddm/001/070/152000c

近代憲法の「元祖」といえる中世英国のマグナカルタ(大憲章)は王の権力を制限したい貴族らがジョン王に迫って制定させた。その第4条は未成年の貴族の相続地を管理する後見人の損害賠償条項である。
当時は後見人となった国王の役人が、管理する土地を勝手に収奪して荒らすケースが多かったらしい。貴族たちはよほど頭にきていたようだ。課税の制限や人身保護の規定に先立って、その損害を賠償させる条文を憲章に置いたのだ。
こうみれば「憲法」は、管理をまかせた土地を勝手に荒らす役人への怒りが生んだといえなくもない。そういえば最近も似た話を聞いたような……と思い当たる方には、その話を徹底解明せずに改憲を説かれても容易に納得はできまい。
森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書が書き換えられていたとの疑惑で国会が空転した。財務省はすべての文書を確認できぬ状況だとして実質的な説明を避けたが、与党からも「理解できない」と批判が出るありさまだ。
おりしも税の申告期、国税庁長官はこの問題で交渉記録はないと答弁していた前理財局長とあってメディアの前から姿をくらましている。不透明な国有地処分や徴税への国民の不満をあまりにも軽んじた政権と財務省の剣が峰である。
振り返れば近代初の成文憲法である米国憲法も植民地住民の税への不満の爆発が生んだ。自民党の中では改憲案作りが進むが、税や公の財産をめぐる生々しい国民の不満や怒りこそ憲法の原点なのをお忘れか。