https://mainichi.jp/articles/20180217/ddm/005/070/162000c
http://archive.today/2018.02.17-001547/https://mainichi.jp/articles/20180217/ddm/005/070/162000c
1票の投票価値の例外にしたいのなら、参院の機能見直しが併せて行われなければならない。国民の利益よりも議員の都合を優先していると言わざるを得ない。
自民党憲法改正推進本部が参院選挙区の合区解消を目指す条文案をまとめ、了承された。
憲法47条は選挙制度について「法律でこれを定める」としている。条文案は参院選に関し都道府県単位の区割りを可能とする規定を設けた。「広域の地方公共団体」を選挙区とし「少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる」との内容だ。
参院選挙区は公職選挙法に基づいて都道府県単位を基本とし、人口に応じて議員定数が割り振られる。都市部への人口集中が進み、人口の少ない地方の県に改選1議席を割り当てるのが難しくなったため、鳥取と島根、徳島と高知を合区した。
合区導入前の参院選では5倍前後あった1票の格差が最高裁判決で「違憲状態」とされてきた。自民党の条文案は47条の改正によって合区前の格差を合憲と解釈できる「お墨付き」を与えようというものだ。
有権者の参政権は民主主義の根幹だ。仮に衆院と違う特例を参院に認めるのであれば、衆院との対等性の見直しは避けられないはずだ。
条文案には、衆院の小選挙区についても行政区画などを「総合的に勘案」できる規定が置かれた。
衆院では1票の格差を2倍以内に抑えるため、多くの小選挙区が市区町村を分割する形で区割りされている。行政区画を理由に2倍以上の格差を容認する狙いがあるようだ。
衆院選の区割りには、2020年の国勢調査を待って、人口をより反映できる「アダムズ方式」が導入される予定だ。それをほごにするような条文を紛れ込ませるなど論外だ。
地方自治に関しては、47条改正のため自治体を「広域」(都道府県)と「基礎的」(市区町村)の2通りとする条文案にとどめた。憲法92条の「地方自治の本旨」を肉付けする議論は全く反映されていない。
参院の合区解消に便乗して衆院の区割りまで持ち出している。統治機構を見直す本丸の議論には踏み込んでいない。自分の選挙区を固定化させたい議員の思惑が目につく。
「いいとこ取り」は許されない。