沖縄米軍ヘリ 児童の安全軽んじるな - 東京新聞(2018年1月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018012002000187.html
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海兵隊のヘリコプターが、窓の落下事故を起こした普天間第二小学校上空を飛行した。可能な限り避けるとした自らの約束をほごにするものだ。児童の安全を軽んじる飛行は断じて許されない。
日本の防衛省も、よほど腹に据えかねたのであろう。小野寺五典防衛相はきのう、記者団に対し、証拠映像を米軍に提供して事実確認を求めたことを明らかにした。米軍側は小学校上空の飛行を否定しているが、小野寺氏は「私どもは映像や監視員の目視で確認している。このような飛行はやめてもらいたい」とも強調した。
米軍に対し、いつになく毅然(きぜん)とした態度だ。米海兵隊普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への「県内移設」が争点となる名護市長選は来月四日に行われる。今秋には県知事選もある。
強く迫らなければ、選挙への影響が避けられないとの判断も、安倍政権側にあるのだろうか。
選挙があろうがなかろうが、児童の安全を脅かすような危険な飛行の再開は、断じて許すべきではない。それが国民の命と暮らしを守る崇高な使命を負う防衛相として、当然取るべき態度である。
普天間第二小学校は、普天間飛行場に隣接する。昨年十二月、児童ら約五十人が体育の授業中だった運動場に、同飛行場の大型輸送ヘリCH53Eからアクリル製の窓が金属製の枠ごと落下した。
この事故後、沖縄県翁長雄志知事は学校、病院上空の飛行禁止を求めたが、米側は受け入れず、小学校上空の飛行は「最大限可能な限り避ける」というのが、日米間のせめてもの合意のはずだ。
米軍側が小学校上空は飛行していないと否定するのなら、航跡データなどを開示すべきだろう。
日本政府が小学校上空の飛行を確認したのは、運動場再開に向けて、児童らがヘリ接近を想定した避難訓練を始めたその日だった。
信義に反するのは当然だが、そもそも小学校近くの上空を、軍用ヘリが飛び交うこと自体が異常極まりない。米本国ではあり得ないことが、沖縄で頻発している現実から目を背けていいのか。
沖縄県には在日米軍専用施設の約70%が集中し、事故や騒音、米兵らによる犯罪が多発している。県民にとって米軍は「よき隣人」とはとても言えない状況だ。
沖縄にある米軍基地を大幅に縮小し、米側に特権的な法的地位を認める日米地位協定も見直しでなく改定する。もはや小手先ではない、抜本的対応が必要である。