(筆洗)米国の市民社会の「免疫力」は健在なり - 東京新聞(2018年1月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018012002000161.html
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七十三歳の史上最高齢で米大統領に再選されたロナルド・レーガン氏は、物忘れがひどくなり、大切な会議の最中に居眠りすることがあったという。
彼は自分の居眠りを、こんなジョークで笑い飛ばした。「私は、国家の一大事であればいついかなる時でも、起こすように厳命した。それがたとえ、閣議の最中でもだ」
レーガン氏は在任中からガンの手術などを繰り返し受け、退任後にはアルツハイマー病と分かったが、七十歳で大統領となったトランプ氏は、すこぶる健康なようだ。
先日受けた健康診断では、軽度認知障害の有無を調べる検査で「正常」との結果が出たそうだが、古稀(こき)を超えて、自身を「私は安定した天才だ!」と公言できる人は、古来稀(こらいまれ)だろう。
就任してきょうで、一年。気候変動対策のパリ協定から手を引くと言い、中東和平への道をふさぎ、差別をあおる発言を繰り返し…と、人々の血圧を上げるようなことを繰り返してきた。それでも本人の血圧は「上が一二二、下が七四」というから、恐れ入る。
トランプ氏の型破りな言動ばかり注目を集めているが、この一年、米国では環境・人権団体などへの寄付が激増し、憲法を読み直す人が増え、何より、自分たちの手で社会を変えようという市民の動きが目立つという。政権の病みようはともかく米国の市民社会の「免疫力」は健在なり、ということか。