父親殺害 元少年に懲役11年 「面前DV」影響認定せず - 毎日新聞(2017年12月13日)

https://mainichi.jp/articles/20171214/k00/00m/040/078000c
http://archive.is/2017.12.14-034601/https://mainichi.jp/articles/20171214/k00/00m/040/078000c

仙台市で2015年12月、父親を刺殺したとして殺人罪に問われた当時19歳の元少年(21)の裁判員裁判で、仙台地裁(加藤亮裁判長)は13日、懲役11年(求刑・懲役14年)を言い渡した。
弁護側は、元少年が幼少期から激しい夫婦げんかを日常的に目撃する心理的虐待「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」で健全な人格が育たなかったと主張し、一部執行猶予付き判決を求めていた。加藤裁判長は「被告の人格や動機の形成に相応の影響を及ぼした点は一定程度酌むことができる」とする一方、「犯行を正当化するほどの落ち度が被害者にあったとは評価できない」と述べ、弁護側の主張を退けた。
判決によると、元少年は15年12月1日夜、自宅で同居の父親(当時49歳)と口論になり、胸や背中をナイフ(刃渡り約10センチ)で多数回刺し、失血死させた。
公判で検察側は「犯行は悪質で残忍。両親がけんかばかりする中で育った成育歴はある程度考慮すべきだが、大きく酌むべきではない」と主張。弁護側は「被害者の一連の言動などから精神的に追い詰められ、行動を制御できなかった。治療すれば社会復帰できる可能性がある」と減軽を求めていた。
加藤裁判長は判決理由で「被害者を強い力で約60回刺しており、危険性が高くむごい。被害者の事件直前の言動が著しく不適切とも言えない」と指摘した。【鈴木一也、坂根真理】


面前DVの影響理解まだまだ
武蔵野大名誉教授で臨床心理士春原由紀さん(児童臨床学)の話
家庭内暴力を見て育つと自己肯定感が低くなり、暴力の応酬という形でしか問題解決の方法が学習できなくなる。裁判所は、面前DVの被害の大きさをもっと理解してほしい。元少年は犯した事件の責任はとらなくてはならないが、長期の暴力目撃被害が、加害につながった面があることを社会全体が今一度考えていく必要がある。