少年犯罪の厳罰化 裁判員制度の検証必要 - 秋田魁新報(2016年6月18日)

http://www.sakigake.jp/news/article/20160618AK0014/
http://megalodon.jp/2016-0618-1549-54/www.sakigake.jp/news/article/20160618AK0014/

宮城県石巻市で2010年に起きた3人殺傷事件の上告審判決で、最高裁第1小法廷は殺人罪などに問われた当時18歳の被告の上告を棄却した。裁判員裁判での少年に対する死刑判決が確定する初のケースとなる。
被告は元交際相手の少女を連れ去るため、少女宅に居合わせた少女の姉と友人を刺殺し、姉の知人男性にも重傷を負わせたとされる。今回の最高裁判決により、重大事件では少年でも厳罰適用を回避しない司法の姿勢が改めて鮮明となった。
弁護団は「更生を促す少年法の趣旨が全く生かされていない」と判決を強く批判している。一審の裁判員裁判についても実質5日間という審理の中で、少年法について裁判員が十分理解できたかどうか疑問視する声もある。今回の判決を機に、少年法の理念や裁判員裁判の在り方について議論を深めるべきだろう。
少年による殺人事件では、1983年の故永山則夫元死刑囚の第1次上告審判決で死刑適用基準が示された。永山事件を含め被害者がいずれも4人という3件に対し最高裁は「例外的」として死刑を言い渡した。
しかし、山口県光市母子殺害事件の第1次上告審判決(2006年)では「加害者が少年であることは死刑を回避する決定的な事情にはならない」とし、被害者が2人であっても死刑にすべきとの判断を示した。
今回の最高裁判決も「年齢や前科がないという事情を踏まえても、深い犯罪性に根差した犯行と言うほかなく、刑事責任は極めて重い」とし、光市母子殺害事件の判断に沿っている。
確かに2人の命を奪った結果は重大で、動機も身勝手極まりない。だが、犯行形態など外形的事実を重視して元少年の更生可能性や精神的な未熟さに一切言及しなかったのは、少年事件の判決としては不十分だと言わざるを得ない。
弁護側は上告審で「元少年の更生の可能性はある」と主張した。最高裁として犯罪性と少年法の理念をどのように照らし合わせて結論を出したのかを判決で明らかにしてこそ、今後の裁判員裁判の審理にも資することになったのではないか。
刑罰対象年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げたり、有期刑の上限を15年から20年に引き上げたりと少年事件の厳罰化が進んでいる。現在は少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げることも検討されている。そうした流れの中で、少年法の理念が置き去りになってはなるまい。
市民の負担を軽減するため、裁判員裁判は短期集中審理となるケースが大半だ。限られた時間で被告の少年の成育歴や反省の度合いなどを慎重に検討し、更生の可能性を裁判員が見極めることができるのかどうか。司法関係者は、裁判員裁判が少年の重大事件を扱うことの是非も含めて検証する必要がある。