待機児童対策 首相は32万人で解消というけれど2倍以上足りない - 東京新聞(2017年11月18日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201711/CK2017111802000146.html
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待機児童問題で、政府が目指す二〇二〇年度までのゼロを実現するには何人分の保育の受け皿が必要かを巡り、政府の目標数シンクタンク大手・野村総研の試算に二倍以上の開きがあり、政府・与党内で論議を呼んでいる。政府は三十二万人と算定するが、野村総研は「実態はもっと多い」と主張。目標数が過少なら、待機児童解消の遅れに直結するため、政府に見直しを求める声が強まる可能性もある。 (大杉はるか、坂田奈央)
政府は九月、二〇年度に待機児童ゼロ実現には、一七年度末に三百万人分の受け皿が整備される前提で、あと三十二万人分が必要と設定。直近の認可保育施設への申込率を根拠に、二十五〜四十四歳の女性就業率が80%になっても対応できる数字と説明する。
これに対し、野村総研が五月に公表した試算では、二百八十九万二千人分の受け皿が整備済みだとすると、追加で八十八万六千人分が必要と指摘。
保護者らに実施した独自のアンケートも踏まえ、施設への申し込みを断念した人や育児休暇中の人など、政府が対象にしていない層も算入している。整備済みとした母数は違うが、二倍をはるかに超える差につながった。
政府が十四日に開いた子ども・子育て会議では、民間の委員が野村総研の数字を取り上げ、三十二万人の根拠を示すよう求めた。
幼児教育・保育無償化を議論した十五日の自民党会合には、野村総研の武田佳奈・上級コンサルタントが出席し、八十八万人の根拠を説明。議員側からは「無償化より待機児童解消を優先すべきだ」との意見が出た。厚生労働省の担当者は、野村総研との差を「とらえ方の違い」と説明した。
武田氏は取材に、政府目標について「実際には申し込む前に断念している親もいる。実態を十分に把握できているのかと思わざるを得ない」と疑問視。アンケートでは、保育施設の利用を希望しながら申し込む前にあきらめた保護者が三割近くに上ったと指摘し「国や企業からみると労働力を失っていることを意味する。見過ごせるはずのないものだ」と話した。

◆「達成目指す」所信表明
安倍晋三首相は十七日、衆参両院の本会議で所信表明演説を行い、二〇二〇年度までに三十二万人分の保育の受け皿を整備し、待機児童を解消する目標の達成を目指す考えを重ねて示した。「安倍内閣の決意は揺るがない」と強調した。
首相は、日本の少子高齢化北朝鮮情勢と並べて「国難とも呼ぶべき課題」と指摘。幼児教育・保育無償化にも触れ「一気に進める。二〇年度までに、三歳から五歳まで、全ての子どもたちの費用を無償化する」と語った。