ロシア革命 世紀を越えて問う足跡 - 朝日新聞(2017年11月8日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13218091.html
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世界を揺るがしたロシア革命十月革命)から、きのうで、ちょうど100年を迎えた。
内戦を経て生まれた世界初の社会主義国ソ連は、飢饉(ききん)や弾圧などで膨大な犠牲者を出した。一方で、米国などの資本主義陣営に対抗する価値観を示し、20世紀の世界を二分した。
ソ連は1991年に崩壊し、希代の「実験」は失敗したが、革命の歴史は、今後の世界の針路を探る手がかりを残した。
本家ロシアでは、あの革命の輝きは失われている。プーチン大統領は05年、11月7日を国民の祝日から外した。
革命について「時代遅れを放置する人、転換を求めて破壊へ突き進む人、双方が無責任だから起きる」と突き放す。
一方で、今なおロシア革命をたたえる国もある。中国の習近平(シーチンピン)氏は先月の中国共産党大会で「十月革命の砲声がとどろいて、中国にマルクス・レーニン主義が送り届けられた」と建国の歴史を誇った。
だが、共産党一党独裁ソ連を範にした体制を続ける中国、北朝鮮キューバなどの国々は、自由、人権、平等などで、理想とはほど遠い状況だ。
人類を進歩させるために社会主義革命は不可避だという考えは色あせた。だが、冷戦に勝利したはずの資本主義・自由主義陣営の国々も今、よりよい未来を目指すための羅針盤を失ったかのように漂流している。
グローバル化は世界の格差の構造を複雑にした。新興国の豊かさを増した半面、先進国で格差の不満が高まり、ポピュリズムが既成の政治を脅かす。
富の集中に警告を発するフランスの経済学者ピケティ氏の論著が注目され、米国の「サンダース現象」など不平等への異議申し立てが相次いでいる。
自由と民主主義を掲げる従来の政治が閉塞(へいそく)感に覆われる今、政治家が人気取りのために「革命」という言葉を乱用するのは時代の皮肉というほかない。
公正で平等を保障する社会を築くには、民主主義への問いかけを続けるしかない。その今の現実と今後の指針を考えるうえでも、ロシア革命とその後の現代史は今日的な意味を持つ。
日本もロシア革命に深く関わった。革命翌年、反革命派の支援のために日本軍がロシアに上陸し、一時はシベリア中部まで進軍した。最後のサハリン北部からの撤退は7年後だった。
この「シベリア出兵」は、日本への警戒感をソ連に刻んだ。北方領土問題やシベリア抑留と共に、日ロ関係を考えるうえで忘れてならない歴史である。