第71回読書週間 本との出合いを広げたい - 毎日新聞(2017年10月29日)

https://mainichi.jp/articles/20171029/ddm/005/070/002000c
http://archive.is/2017.10.29-012505/https://mainichi.jp/articles/20171029/ddm/005/070/002000c

秋の深まりとともに、第71回読書週間が始まった(11月9日まで)。ことしの標語は「本に恋する季節です!」。読書離れが続く中、本との出合いを広げる手立てを考えたい。
数ある国内の文学賞はどれぐらい読者を増やしているのだろう。
毎日新聞が16歳以上を対象に実施したことしの読書世論調査で、受賞を参考にして本を買ったことがあると答えた人が25%にのぼった。
2015年の芥川賞受賞作、又吉直樹さんの「火花」は、ミリオンセラーになった。恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」は、ことしの直木賞本屋大賞をダブル受賞して注目された。
今月初旬には、長崎県出身の日系英国人作家カズオ・イシグロさんのノーベル文学賞受賞が決定し、その日本的感性が話題を集めている。
イシグロ作品の邦訳版を出版する早川書房は、8作合わせ105万5000部を増刷した。同社は「受賞により読者層が広がった」と話す。
社会現象にならなくても、文学賞は本と出合う一つのきっかけになるだろう。それを糸口に別のジャンルの本にも取り組んでみたい。
子どもにも本離れは進んでいる。スマートフォンの普及に加え、街の書店が減った影響は見逃せない。
国学図書館協議会(全国SLA)と毎日新聞が小中高校の児童、生徒を対象に行ったことしの学校読書調査によると、本屋に行くと答えた割合が、12年の調査に比べ小中高のいずれも11〜8ポイント減っていた。
気がかりなのは、図書館の利用も小中高と進むにつれ減る傾向があることだ。学校図書館に行くと答えた割合は、小学校の59%に対し、高校生は13%。こちらも、12年調査より小中高のすべてで減少した。
学校教育では、討論や調べ学習を通じて主体的に学ぶ方向が示されている。学校図書館を「学びの場」として活用することも期待されているが、専門家は自然科学や社会科学などの蔵書が少ないと指摘する。
蔵書を見直し、学校図書館を充実させるには、先生の努力だけでなく自治体の財政支援が必要だ。子どもの頃に本の楽しさを知ると、成長してからも読書は身近になる。
本の中には著者のメッセージが詰まっている。人生を豊かにしてくれる本の魅力を若い層に伝えたい。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

火花 (文春文庫)

火花 (文春文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)