カタルーニャ 冷静に自治拡大の道を - 朝日新聞(2017年10月6日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13167888.html
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有名な観光都バルセロナを抱えるスペインのカタルーニャ自治州は、古くから独自の文化や言語を持つ地域だ。
この州で今週、国からの独立を問う住民投票が行われ、中央政府との対立が高まっている。投票日には、警官隊と独立派の衝突で1千人近くが負傷した。
州側は、投票の9割超が賛成したとして、一方的な独立宣言の構えを見せる。これに中央政府は反発を強めている。
ここは双方とも冷静になるべき時だ。州側は無秩序な宣言に走ってはならない。中央政府も流血を起こした対応を猛省し、対話で解決策を探るべきだ。
混乱の背景には、どの先進国も悩む財政問題がある。
カタルーニャ国内総生産の2割を占める豊かな州だが、国の債務危機のために緊縮予算を強いられている。そのため税負担と交付金の分配が不公平だとの不満が高まっていた。
だが、この投票には法的な根拠がない。憲法は「首相の提言と下院の承認を経て、国王が国民投票を発議する」とするが、この手続きを経ておらず、憲法裁判所も差し止めを命じた。
地元も割れていることは、投票率がわずか4割だった事実が示している。多数の負傷は不幸だったが、州の指導者らが民衆の感情をあおるように国からの離反を叫ぶのは無分別だ。
中央政府も力による抑え込みでは秩序を取り戻せないばかりか、国民統合の責務も果たせないことを悟るべきだ。
賢明な選択は、双方が対話の席につき、自治権の拡大をめざす協議を始めることだろう。
バスク自治州では、所得税法人税を含む、ほぼすべての税徴収の権利が認められている。社会保障分野の権限強化などでも妥協点はあるはずだ。
カタルーニャには、財政問題より、深い歴史に根ざす感情がある。1930年代の内戦から75年まで続いたフランコ総統の独裁時代は抵抗の拠点だった。指導者らは投獄され、地元の言語や音楽なども規制された。
欧州には、独立や分離を志向する地域が各地にある。英国のスコットランド北アイルランド、ベルギーのフランドル地方やイタリア北部などだ。
そうした地域の事情も考慮すれば、欧州連合(EU)はカタルーニャ問題で仲介的な関与を検討すべきではないか。
欧州は統合で「国家」の垣根が下がった半面、自国第一主義も広がっている。独立志向の地域に安定的な統治モデルを探ることは、EU全体の将来を考える上でも役立つだろう。