https://mainichi.jp/articles/20171006/ddm/001/070/190000c
http://archive.is/2017.10.06-003649/https://mainichi.jp/articles/20171006/ddm/001/070/190000c
バルセロナはカタルーニャ語でバルサローナと発音する。だからサッカーのFCバルセロナを「バルサ」という。歴史上、宿敵レアル・マドリードとの対戦はしばしばスペイン中央政府との対決の様相を帯びた。
カタルーニャ民族主義が弾圧されたフランコ政権時代、レアルに1対11で敗れた試合は選手や審判に露骨な圧力をかけた政権への怒りと共に語り継がれる。逆に独裁末期の5対0での快勝とリーグ優勝は解放の象徴として記憶された。
カタルーニャ語の使用が禁じられたフランコ時代も土地の言葉が大声で叫ばれたバルサのスタジアムである。その無観客試合が行われた先日だった。カタルーニャ自治州の分離独立をめぐる住民投票の警察による妨害への抗議という。
スペインの憲法裁判所が法的正当性を認めないなか強行された住民投票だった。自治州政府は賛成90%という暫定結果を発表したが、投票率は独立反対派のボイコットで4割にとどまった。中央政府は投票は違憲として認めていない。
警察との衝突による流血で独立派の感情も高ぶるなか、州と中央の対立は深まる一方である。州首相は欧州連合(EU)の介入を求めたが、EUは内政問題だと取り合わない。週明けに独立が宣言されれば混乱は危険水域に達しよう。
「セニイ」はカタルーニャの民族性を表す言葉という。思慮深いリアリズム、バランス感覚のことで、この地域の経済繁栄の基礎である。民族が誇るべきものを見誤ってほしくないカタルーニャ州民だ。