英国がEU離脱 「共存共栄」を目指して - 東京新聞(2020年2月1日)

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英国が三十一日、欧州連合(EU)を離脱、新たな関係づくりのための交渉に入る。今年末までの移行期間中の合意を目指すが、自治政府の反発などによる英国の分裂も心配だ。
昨年十二月の総選挙で与党保守党が大勝し離脱の民意が明らかになった後、関連法案を次々成立させ、離脱実現に向けた動きは順調だった。離脱派が多数を占めた国民投票から三年半も混乱が続き、歯切れのいいジョンソン首相のリーダーシップに託したい気持ちが強まっていたのだろう。
繰り返すが、離脱は賢明な決断ではないと考える。しかし、国民投票に続き、二回にわたり離脱を選んだ。民意は尊重したい。
英国とEUは今年末まで、十一カ月間の離脱移行期間に入るが、関係は当面、変わらない。
英国に続く「離脱ドミノ」の動きはなく、EU側への直接的な打撃は少ない。心配なのは英国の今後だ。
移行期間中に、解決すべき難題は多い。
離脱に伴い英国とEU加盟国との間で原則、関税が復活する。英国は、関税を撤廃あるいは削減する自由貿易協定(FTA)締結を目指す。移民は受け入れたくないが、医師などの人材は迎えたい。
結束を崩したくないEUは、いいとこ取りを許すまい。厳しい交渉になりそうだ。
これまでの交渉で最もやっかいだったのが、英領北アイルランドの扱いだ。EU加盟国アイルランドとの間で自由な往来ができなくなると、アイルランドとの統一論を巡る紛争が再燃しかねない。当面、北アイルランドのみをEU単一市場に残すことで合意したが、具体的な詰めはこれからだ。
スコットランドではEU残留派が多数を占める。自治政府は独立の是非を問う再国民投票を求めるが、ジョンソン氏は反対し、早くも溝は広がっている。
離脱にあたり、ジョンソン氏は「真の国家の刷新だ」とバラ色の未来を語る。実現はジョンソン氏の手腕にかかる。ポピュリズムに流されず、EUとの共存共栄を目指してほしい。
今年末までに合意できない場合、離脱協定案で認められた移行期間の二年延長も視野に入れるべきだろう。EU側も英国を追い詰めるのは控えてほしい。
欧州での拠点を英国に置く日本企業は多いが、EU離脱で見直す動きも出始めている。情勢を見極め、対応したい。