学術会議 会長に軍事研究慎重派 山極京大学長「検討委早期に」 - 東京新聞(2017年10月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017100302000118.html
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日本の科学者を代表する機関である日本学術会議は二日、東京都内で総会を開き、新会長に京都大の山極寿一(やまぎわじゅいち)学長を選出した。任期は二日から二〇二〇年九月末まで。前任の大西隆氏(豊橋技術科学大学長)は、学術会議がそれまで否定してきた軍事研究について、自衛目的なら認めるとの姿勢を示していたが、山極氏は対照的に慎重な立場を取ってきた。 (望月衣塑子)
学術会議は一九五〇、六七年に「軍事研究は行わない」との声明を決議。これに対し大西氏は昨年四月、「自衛隊に好意的な(国民の)意見が90%を超えている。自衛目的にかなう研究を大学等が行うことは許容されるべきではないか」と発言した。
学術会議は発言を受け、大学などで行う軍事応用が可能な基礎研究を助成する防衛省の公募制度などについて、検討する委員会を設置した。委員会が今年三月に決定した声明は、軍事研究を否定する過去の声明を継承するとし、防衛省の制度についても「研究への政府の介入が著しく、問題が多い」と警鐘を鳴らした。しかし、助成への応募禁止は盛り込まなかった。
山極氏は、大西氏の昨年四月の発言の際に「自衛隊の活動全般にわたって国民の総意は得られていない。過去の学術会議の声明を変えることのないような文言を考えていただきたい」と反論。委員会でも「日本の大学が国際化を求められる中で、軍事研究を大学が行うことは、国際化の流れと逆行することになるのではないか」などと述べていた。
複数の学術会議関係者によると、会議内では「軍事と一線を画す科学者の立場を明確にするためにも、新会長は軍学共同に慎重な姿勢を持つ人物を置くべきだ」などとの声が上がっていたという。
山極氏は五二年生まれ。アフリカ各地でのゴリラの研究で知られ、二〇一四年から京都大学長を務めている。
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山極氏はこの日、報道陣の取材に「学術の軍事に対する距離の置き方を検討する常設の委員会をなるべく早く立ち上げたい」との意向を示した。