安倍晋三氏に総理再選を諦めさせる本当の勝敗ラインを検証 - NEWSポストセブン(2017年9月29日)

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安倍政権は今回の解散総選挙の“大義”として、「消費増税分を教育無償化に回す」などと言い出しているが、本当の目的は悲願である憲法改正の実現にあるとみて間違いない。
今年5月の憲法記念日安倍晋三・首相は突然、「2020年に新憲法施行」と宣言したものの、直後から加計スキャンダルで支持率は急落。それが北朝鮮ミサイル危機と野党の敵失で上向き、“夢よ、もう一度”とばかりに解散に踏み切った。政治アナリスト・伊藤惇夫氏はこうみる。
「安保法制の時と同様に、選挙の時には本当の目的を前面に出さず、改憲勢力で3分の2を取ることができれば、来年1月からの通常国会で発議に踏み切るつもりでしょう。逆に、改憲発議の見通しが立たなければ安倍退陣につながってくると考えられる」
では、改憲案を国民投票にかける発議のために必要な、「改憲勢力で3分の2」が勝敗ラインとなると考えるとどうなるか。
定数10減で465議席を各党が争う次の総選挙では「3分の2」は310議席。現下の情勢分析だと、自民以外の改憲勢力として「公明が30〜35議席、維新が約10議席。未知数だが、民進党を離党した細野豪志・元環境相のグループを加えた小池新党も改憲には前向きで、10議席以上は取ってくるだろう」(選挙プランナー)とみられている。つまり、計算上は自民党現有議席から約40減らして250議席程度にとどまったとしても、「改憲勢力で3分の2」は保持される。
だとすれば「総理再選=第4次安倍内閣成立」を阻止するのは非常に難しく見えるが、そう単純な話でもない。

◆「20議席減」で尻に火がつく
「一言に改憲勢力といっても、安倍首相が考えているのは自衛隊憲法上に位置づける“9条3項”の創設。一方で、たとえば小池新党は『一院制導入』を前面に出すとみられるなど方向性は大きく違い、調整は一筋縄ではいかない」(同前)
その一方で、改憲発議のために残された時間は決して多くないのだ。前出・伊藤氏の指摘。
「安倍首相が来年1月の通常国会での発議にこだわってきたのは、2019年に参院選があるからです。この選挙は自民党が大勝を収めた2013年参院選の当選組(65議席)が改選となる。前回は野党協力が全く進んでいなかったから、1人区で自民が29勝2敗と圧勝できたが、次も同様に勝つのは至難の業。むしろ議席減になると考えられる」
つまり、発議がずれ込めば、先に「参院の3分の2」を失ってしまう可能性が高いのである。それを避けて安倍首相が短期間で改憲勢力をまとめ上げる主導権を握るためには、次の総選挙で「改憲勢力でギリギリ3分の2」では足りない。「仮に自民が20〜30議席減らして、260〜270議席程度にとどまれば、責任論で突き上げられて改憲発議どころではなくなる」(同前)とみられているのだ。
そのためには何が必要か。有権者が「民の反撃」をするための手段の有力な武器が「落選運動」だ。
落選運動」は議員として相応しくないと考えられる候補の名前を挙げて「××を落選させよう」「当選させるな」と口コミやインターネットで呼び掛ける運動だ。「特定の候補を当選させる」行為である選挙運動ではないことから、18歳未満など有権者でなくても参加できるし、呼びかけるのが公示期間中でも、投票日当日でも公選法には抵触しない。
落選運動」が機能すれば、これは決して不可能な数字ではない。勝負の分かれ目は、想像以上に薄氷なのである。
週刊ポスト2017年10月6日号