https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190723/KT190722ETI090013000.php
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安倍晋三首相がきのう、参院選を受けて記者会見を開いた。与党で改選議席の過半数を確保したことについて「(改憲を)議論すべきという国民の審判は下った」と述べている。
参院選を、改憲議論の進展に結び付ける意図が明らかだ。
国会の憲法審査会の議論は、これまで停滞してきた。選挙戦で首相は「憲法を議論する政党か、議論を拒否する政党か」と繰り返した。状況の打開を図る思惑だったのだろう。
ただし、野党の多くは主要テーマとして取り上げなかった。与党の公明党も「争点として憲法は熟度が浅い」などとして、演説で憲法に言及していない。首相も公明に配慮して、公明候補の応援では憲法に触れなかった。
世論調査では、有権者が投票で重視する項目として、憲法は経済対策や医療・福祉に比べ大幅に少ない。共同通信社の出口調査でも改憲「反対」が半数近くを占め、「賛成」を上回った。
自民党の獲得議席数は57議席で、改選過半数を下回っている。非改選を合わせても113議席で、単独過半数を下回った。この状況で、なぜ「議論すべき」が国民の審判になるのか。
公明の山口那津男代表もきのうのテレビ番組で「議論すべきだと受け取るのは少し強引だ」と述べている。有権者の声を聞き間違えてはならない。
首相の認識にも問題がある。会見で「(国民投票にかける)案を議論するのは国会議員の責任」と強調したことだ。
憲法では、首相や閣僚、国会議員が憲法を尊重し擁護する義務を負う。改憲の議論を国会に義務づける条文は存在しない。首相は自らの信条に基づく改憲を国会に押しつけてはならない。
参院選の結果、安倍政権での改憲に前向きな勢力の議席が、国会発議に必要な3分の2(164議席)を割り込んだ。
首相は「改憲勢力が決まっているわけではない」として、国民民主党などに秋波を送っている。2020年の改正憲法施行も視野に入れており、今後、取り込みを図っていくことが予想される。
改めるべきは、首相や自民党の憲法を軽んじる振る舞いと、強引に議論を進める姿勢だ。無理な改憲に引っ張られないか、与党だけでなく野党の対応も厳しく見つめていかねばならない。