絶えない部活動の体罰 意識改革まだまだ足りぬ - 毎日新聞(2017年9月7日)

https://mainichi.jp/articles/20170907/ddm/005/070/028000c
http://archive.is/2017.09.07-002315/https://mainichi.jp/articles/20170907/ddm/005/070/028000c

中学校や高校などの運動部活動指導者による体罰が再び目立ち始めている。「指導」と称した体罰や暴力とは即刻決別すべきだ。
東京都内のバスケットボール部岐阜県内の野球部では「大きく成長させる」「気合を入れ直す」と、顧問らが長時間にわたるランニングを課し、部員が熱中症で倒れた。こうした懲罰的なしごきも体罰だ。
奈良県内ではサッカー部顧問が部員の顔を平手打ちする体罰や、至近距離から蹴ったボールを体で受け止めさせる監督の不適切な指導が発覚した。
文部科学省の運動部活動での指導のガイドラインでは、殴る蹴るはもちろんのこと、特定の生徒に対して執拗(しつよう)かつ過度に肉体的、精神的負荷を与えることなどを「許されない指導」としている。
東京都の事例は、都教委が「体罰に当たる」と認めた。その他もガイドラインに反した暴力的指導であることは明らかだ。
2012年12月、大阪市立桜宮(さくらのみや)高校バスケットボール部の主将が顧問の教諭から日常的に体罰を受け、自殺した事件を契機に、部活動の暴力的な指導が次々と表面化した。
文科省の調査では、中学・高校の部活動での体罰は減少傾向にあるが、15年度でも195件発生した。体罰全体の約3割が部活動中だ。発生件数というが、認知できた数と取るべきで実際はもっと多いだろう。
桜宮高の事件以降、自治体やさまざまな競技団体が「暴力根絶」を宣言したが、現場には浸透していないとしか思えない。
部活動は子どもたちが自発的に参加し、成功と失敗の実体験を重ねて人間形成に役立てていく場だ。
暴力から生まれるのは指導者への恐怖心であり、本物の競技力が養われることはない。指導者は意識を変えていかねばならない。
スポーツ庁は部活動の指針作りを進めている。専門的な知識がなくとも子どもたちの自立心を養っている指導者を掘り起こし、研修などで広めれば意識改革につながるだろう。
暴力に頼った指導者の心理療法プログラムや会員制交流サイト(SNS)を使った子どもからの通報制度はできないか。求められるのは暴力根絶に向けた具体的な方策だ。