移民の子「人生築いたのに」 米、送還猶予廃止 - 東京新聞(2017年9月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201709/CK2017090702000131.html
https://megalodon.jp/2017-0907-0921-37/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201709/CK2017090702000131.html

【ニューヨーク=東條仁史】トランプ政権が不法移民の若者の救済制度廃止を発表したことを受け、全米で批判の声が高まっている。「ドリーマーズ(夢見る人々)」と呼ばれる制度の対象の若者ら約八十万人は、米国で育ち、地域に根付いた人々。トランプ氏の決定に怒り悲しむ。
「心が痛む。失望した。米国にいてほしくない、というのがトランプ氏のメッセージだ」。ヒスパニック(中南米系)の移民が多く住み、スペイン語が飛び交うニューヨーク東部のクイーンズ区。この地に住む男性のリカルド・アカさん(26)は、悲しそうな表情で語った。
メキシコ中部プエブラ出身。十四歳の時、学費も払えない貧困状態から抜け出すため、家族らと米国に渡った。二〇一二年の制度導入で就労資格を獲得。現在はニューヨークのホテルで週四十時間働き、月二千五百ドル(約二十七万円)を稼ぐ。移民支援団体の援助で、大学にも通っている。
「米国で自分の人生を築いてきたのに努力が無意味になる。強制送還の恐怖におびえる日々には戻りたくない」と切実に訴えた。
ニューヨーク最北端のブロンクスで暮らす女性のズレイマ・ドミンゲズさん(23)は「怒りや恐怖、いろんな感情があふれている。トランプ氏は白人しか受け入れようとしない」と言う。アカさんと同じプエブラ出身で、米国に来たのは七歳の時だった。
大手小売りチェーンで働くドミンゲズさんは、来年五月の大学卒業後、自分と同じ境遇の移民やホームレスの支援をする仕事を目指している。「私が残った方が米国のためになるのに…」と話した。
アカさんとドミンゲズさんは来年十二月で就労資格が切れるがメキシコに戻る意思はない。「米国政府に従うより、移民社会のために米国で闘う」。ドミンゲズさんはきっぱりと語った。

◆移民締め出し 司法、聖域都市禁止に「待った」
【ニューヨーク=赤川肇】治安対策を名目として不法移民を締め出す政策を次々と打ち出すトランプ米政権に、「待った」を掛ける司法判断も相次いでいる。
不法移民に寛容な「聖域都市」と呼ばれる自治体を巡り、南部テキサス州が全米で初めて聖域都市を禁じる内容の州法を制定して今月一日の施行を目指したのに対し、連邦地裁は州法を一時差し止める仮処分決定を下した。
聖域都市は、当局者が個人に滞在資格を尋ねない郡や市などの自治体で、東部ニューヨークや西部ロサンゼルスなど全米に三百以上あるとされる。こうした自治体が不法移民に寛容なのは、当局が犯罪の情報をつかむ上で不法移民からの通報に頼らざるを得ないからだ、との指摘もある。
しかし、州議会で共和党が優位を占めるテキサス州が、共和党のトランプ政権の後押しを受けて五月に制定した州法は、警察官や保安官が交通取り締まりなどの際に滞在資格を尋ねることを促し、逆に、不法移民の強制送還に協力しない警察官を取り締まる内容だった。
これに対し、連邦地裁は先月三十日、州法が施行されれば、むしろ「地域の安全を損なう」として、州法を一時差し止めた。
聖域都市への締め付けでは、トランプ大統領が就任直後の一月、不法移民対策に協力しない聖域都市への連邦補助金を打ち切る大統領令に署名。西部サンフランシスコ市などが「大統領権限を越えて違憲だ」と訴え、連邦地裁も「自治体財政が不安定になる」と一部差し止めを認めていた。
 ところが、政権は先月、連邦補助金の新たな交付条件を発表。聖域都市への圧力をかけ続けている。