<脱 子どもの貧困>(下)「あれも、これも」の予算を 兵庫県明石市・泉房穂市長:東京 - 東京新聞(2017年8月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201708/CK2017081002000171.html
https://megalodon.jp/2017-0810-0948-26/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017081002000201.html

子どもを核とした町づくりをしている。全ての子どもに対し、行政と地域が連携し、みんなで応援するというコンセプトだ。貧しい家庭の子どもだけでなく、誰ひとり見捨てずに支える。
親の収入で線を引いて支援をすると、こぼれ落ちてしまう子がいたり、どこで線引きをするかで議論が複雑化したりする。明石市は中学生までの医療費と第二子以降の保育料を無料にしているが所得制限はしていない。
相談のチャンスが失われると、問題は長引きやすい。支援は早期に、継続的にすることが大事だ。今年一月から、市が把握した妊婦全員への面談を始めた。早くに親の困り事を知り、フォローする。また児童手当は漫然と振り込まず、乳幼児健診などで本人の健康が確認できるまでは支払わない仕組みだ。
子ども食堂は、小学校区ごとに一カ所できるように整備している。子どもの目線に立てば、市内に一カ所程度では通えない。二〇一九年春、市内に児童相談所を設置する予定で、食堂と連携する仕組みをつくり、子どもの危機にいち早く気付ける拠点としたい。子ども食堂はブームのようだったが、これからは実際の課題に向き合っていく時期に来ている。
行政の政策で、予算を何に振り分けるかは「選択と集中」と言われる。子どもについては「あれか、これか」ではなく、「あれも、これも」必要だ。子どもの貧困というのは、子どもを貧しさに追いやっている政治の貧しさの表れだと言える。
明石市では、他の市に比べて、子ども施策に予算を投じている。結果として、人口は増加に転じ、新たに生まれる赤ちゃんが増え、税収も上がった。子どもにしっかりとお金を使うことは町の未来のためにもなる。予算をシフトすることで、子どもたちが救われる。

<いずみ・ふさほ> 53歳。明石市生まれ。東京大卒業後、NHKディレクター、衆院議員、弁護士などを経て、2011年より現職

兵庫県明石市> 瀬戸内海に面し、大阪市や神戸市に通勤する人のベッドタウン。子どもの医療費の無料化や教育環境の整備など、子育て世代への支援を充実させているほか、障害者施策にも力を入れている。人口は4年連続で増加し、17年7月時点で29万5296人。子どもの出生数も15年以降、2年連続で増えた。市によると、20代〜30代の子育て世代の流入が進んでいる。18年度からの中核市移行を目指している。

◆学習支援で「連鎖」絶つ
都内で就学援助制度を利用しているのは2015年度で16万2000人余りと、全体の20.4%を占める。13年度の22.3%と比べてやや減少している。首都大学東京の阿部彩教授(貧困・格差論)と都の16年調査によると、授業が分からないと感じる中学2年生の割合は全体で24%なのに対し、生活困窮層は52%と跳ね上がり、経済状況が子どもの学びに大きな影響を与えていることが浮かび上がった。
都の主な対策は、生活困窮家庭やひとり親家庭の子どもを対象に、学習を支援する事業などがある。生活困窮家庭向けは、16年度は39区市と西多摩福祉事務所で実施され、本年度は46区市に拡大。利用者も年々増えている。
「貧困の連鎖」を絶つ取り組みとしては、高校卒業程度認定試験の講座受講料を支援している。いずれの事業も、19年度末に都内全62自治体が取り組めるよう体制を整える目標を掲げている。 (木原育子)