是枝裕和監督初の法廷ドラマ 22年ぶりベネチア国際映画祭に出品 - 東京新聞(2017年8月10日)

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福山雅治を主演に迎え、是枝裕和監督がメガホンをとった映画「三度目の殺人」が30日にイタリアで開幕するベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品される。近年は「家族」をテーマに撮り続けてきた是枝監督が初めて法廷ドラマで心理サスペンスに挑んだ。「人が人を裁くとはどういうことかを考え、描いた。私たちが持つ司法制度について考え、問題提起をしたつもりです」と話す。 (金森篤史)
福山とは「そして父になる」(二〇一三年)以来二度目。「監督と役者として相性がよかった」として今回、出演を依頼した。
「裁き」というテーマを選んだのは、知人の弁護士から「法廷は真実を明らかにする場ではない」と聞いたことが発端。たとえ真相が分からなくても、両者の言い分を基に、何らかの判決を下すのが裁判。「面白いと同時に怖いと思った」と明かす。
福山演じる弁護士の重盛は、強盗殺人の前科がありながら再び同じ罪で起訴された三隅(役所広司)の弁護をすることになる。解雇された工場の社長をカネ目当てに殺し、自供もしていたが、接見室で会うたびに発言が変わり、殺人の動機さえも二転三転する。なぜ殺したのか。いや、本当に殺したのか。重盛はそれまで弁護には不要だと思っていた「真実」を知りたいと願うようになる。
「真実なんて分からない。私たちは、不完全な人間による絶対的な裁きを許容している。果たしてそんな裁きができるほど、人間はいろんなことを理解しているのか」。是枝監督はそんな問いを突きつける。
七回ある接見室のシーンは、俳優の動きが制約される中で、見応えのあるものに仕上がっている。監督は「密室で顔とせりふだけでやるしかないが、役所さんと福山さんが火花を散らし、思っていたより数段いいものが撮れた」と話す。
ベネチア国際映画祭は世界三大映画祭の一つで、是枝監督の作品としては、一九九五年の同映画祭で「金のオゼッラ賞」(撮影賞)を受賞した監督デビュー作「幻の光」以来、二度目の出品。是枝監督は「ベネチアへの参加は二十二年ぶり。やはり自分自身の映画監督としてのキャリアがスタートした場所なので感慨深いものがある。今までにないチャレンジをした作品なので、イタリアで受け入れてもらえるのか楽しみ」などとコメントした。
本作は来月九日に全国公開される。