<「共謀罪」論戦検証>(4)警察 恣意的運用余地残す - 東京新聞(2017年6月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017062002000229.html
https://megalodon.jp/2017-0621-1410-24/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017062002000229.html


東京五輪へ向け、テロを未然に防ぐ。政府が、そう強調した「共謀罪」法は今後、警察の運用に委ねられる。恣意的(しいてき)に判断できる余地があり、厳しくチェックすることが重要だ。
共謀罪は、別の事件で逮捕され計画を供述したり、メモが見つかったりした場合を除けば、計画を証明するのは難しい。
計画の存在を知るには、これまでよりもメールやLINE(ライン)などさまざまな手段によるコミュニケーションの内容を把握する必要がある。「監視社会を招く」「一般人が巻き込まれる」との疑念は深い。
国会審議では、国内に住むイスラム教徒の個人情報を収集した警視庁の資料がインターネット上に流出した事件や、風力発電計画に反対する住民の情報を岐阜県警が事業者側に漏らしていた事例などを基に、野党が警察の情報収集活動の実態を追及。警察庁の白川靖浩官房審議官は答弁で、警察の情報収集活動について「公共の安全と秩序の維持の観点から行う」と一般論を繰り返した。
今後は計画を証明する手段として、さらなる警察の捜査権限拡大が検討されるだろう。ある警察幹部は「諸外国のテロ対策を見れば、裁判官の令状がなくても通信傍受や身柄拘束ができるようにしなければならない」と話す。
警察は全国約三十万人の強大な組織で、政権内部には警察庁出身者も少なくない。言論による正当な政治批判や、人権、環境保護などを訴える人たちの表現活動を「共謀罪」の対象にすることは決して許されない。市民らの萎縮効果は大きく、民主主義は根底から崩れかねない。「不偏不党かつ公平中正」「権限乱用はあってはならない」という警察法の責務を、警察官一人一人が実践してほしい。 (土門哲雄)