http://www.asahi.com/articles/ASK6L5S6DK6LUTIL020.html
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犯罪を計画段階から処罰できる「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法の成立を受け、反対する立場の大学教授らが18日、抗議声明を出した。「法律の内容も、国会での手続きも民主主義を破壊する暴挙だ」と批判。法律の廃止を訴えている。
「安全保障関連法に反対する学者の会」(約1万4千人)の呼びかけ人の62人。参院で委員会採決を省略する「中間報告」の手続きを使ったことについて、「特に緊急を要する場合にしか認められず、国会法に違反する」と主張。表現の自由の観点から法案に懸念を示した国連の特別報告者に政府が抗議したことにも触れ、「国連との関係悪化は日本の国益を侵害する」とした。
この日、7人が東京都内で会見し、高山佳奈子・京都大教授は「テロ対策の主要な国際条約を批准し、すでに国内法の整備は終わっている。五輪の安全のため、テロ対策のためという政府の説明は虚偽だ」と話した。内田樹(たつる)・神戸女学院大名誉教授も「反政府的な運動を弾圧することを政府が容認しているという妄想をこの法律が生む素地がある」と述べた。
7月9日午後1時半から「自由が危ない」と題した市民向け集会を早稲田大学(東京都新宿区)で開く。■共謀罪法案の強行採決に対する抗議声明
2017年6月15日に、自民党・公明党・日本維新の会は、参議院において、組織的犯罪処罰法改正法案につき、法務委員会での採決を経ることなく本会議での採決を強行した。内容的にも、手続的にも、民主主義を破壊する暴挙である。閣僚・与党および法務省は本法案を「テロ等準備罪」を創設するものと称したが、当初明らかになった案には「テロ」の語が存在しなかった。その後も「テロリズム集団その他」の語が挿入されただけで、テロ対策を内容とする条文は全く含まれない。しかも、日本はテロ対策主要国際条約をすべて批准し、国内法化を終えていることから、組織的なテロの準備行為はすでに網羅的に処罰対象である。本立法にテロ対策の意義はない。内閣が法案提出にあたって理由とした国連国際組織犯罪防止条約も、その公式「立法ガイド」の執筆者が明言するとおり、テロ対策を内容とするものではない。
本改正法の処罰対象は、犯罪の計画の合意と「実行準備行為」から成る、国際的に共謀罪(conspiracy)と理解されるものにほかならない。主体の要件とされる「組織的犯罪集団」には、一般の団体の一部をなす集団の性質が犯罪的なものに変化すれば該当することとなり、人権団体や環境保護団体として組織されたものも対象たりうることを政府答弁は認めている。「実行準備行為」は実質的な危険を含まない単なる「行為」で足り、無限定である。約300に及ぶ対象犯罪は、テロにもマフィアにも関係のない多数の類型を含む一方で、警察の職権濫用(らんよう)・暴行陵虐罪や公職選挙法違反など公権力を私物化する罪や、民間の商業賄賂罪など組織的経済犯罪を意図的に除外しており、国連条約の趣旨に明らかに反している。
こうした点について国会で実質的な議論を拒み、虚偽の呼称により国民をだまし討ちにしようとする政府の姿勢は、議会制民主主義への攻撃である。さらに参議院での採決は、委員会採決を経ない手続を「特に緊急を要する」場合にしか認めない国会法に違反している。
これらの内容・手続の問題点を問いただす公式の書簡がプライバシー権に関する国連特別報告者から首相宛てに出されたにもかかわらず、政府は質問に回答するどころかこれに抗議した。国連人権委員会においては、表現の自由に関する特別報告者によって、日本の政治家の圧力によるメディアの情報操作も公式に報告されている。国連との関係の悪化は、北朝鮮問題の解決や国連国際組織犯罪防止条約への参加を要する日本の国益を侵害している。
ここに、本強行採決に強く抗議し、今後、市民の自由を侵害する怖(おそ)れのある法が悪用されないよう厳しく監視することと、立憲主義と民主主義を回復する勢力によって、この法を廃止することを広く社会に対して呼びかける。
2017年6月18日
安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人一同
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「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人
・青井 未帆 (学習院大学教授 法学)
・浅倉 むつ子 (早稲田大学教授 法学)
・池内 了 (名古屋大学名誉教授 宇宙物理学)
・伊藤 誠 (東京大学名誉教授 経済学)
・上田 誠也 (東京大学名誉教授 地球物理学/日本学士院会員)
・上野 健爾 (京都大学名誉教授 数学)
・鵜飼 哲 (一橋大学教授 フランス文学・フランス思想)
・内田 樹 (神戸女学院大学名誉教授 哲学)
・内海 愛子 (恵泉女学園大学名誉教授 日本―アジア関係論)
・宇野 重規 (東京大学教授 政治思想史)
・大澤 眞理 (東京大学教授 社会政策)
・岡野 八代 (同志社大学教授 西洋政治思想史・フェミニズム理論)
・戒能 通厚 (早稲田大学名誉教授 法学)
・加藤 節 (成蹊大学名誉教授 政治哲学)
・金子 勝 (慶応義塾大学教授 財政学)
・佐藤 学 (学習院大学教授 教育学)
・島薗 進 (上智大学教授 宗教学)
・杉田 敦 (法政大学教授 政治学)
・高橋 哲哉 (東京大学教授 哲学)
・高山 佳奈子 (京都大学教授 法学)
・千葉 眞 (国際基督教大学特任教授 政治思想)
・中塚 明 (奈良女子大学名誉教授 日本近代史)
・永田 和宏 (京都大学名誉教授・京都産業大学教授 細胞生物学)
・西谷 修 (立教大学特任教授 哲学・思想史)
・浜 矩子 (同志社大学教授 国際経済)
・広田 照幸 (日本大学教授 教育学)
・廣渡 清吾 (東京大学名誉教授 法学/日本学術会議前会長)
・堀尾 輝久 (東京大学名誉教授 教育学)
・益川 敏英 (京都大学名誉教授 物理学/ノーベル賞受賞者)
・間宮 陽介 (青山学院大学特任教授 経済学)
・三島 憲一 (大阪大学名誉教授 哲学・思想史)
・水野 和夫 (法政大学教授 経済学)
・宮本 憲一 (大阪市立大学名誉教授 経済学)
・山口 二郎 (法政大学教授 政治学)
・横湯 園子 (中央大学元教授・北海道大学元教授 臨床心理学)
・吉田 裕 (一橋大学教授 日本史)