文科省へ要求、複数ルートで次々接触 加計学園問題 - 朝日新聞(2017年6月1日)

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学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画をめぐり、同学園理事で内閣官房参与だった木曽功氏が前川喜平・文部科学事務次官(当時)に会い、学部新設が話題になっていた。学部の新設に慎重な文科省に対し、首相官邸内閣府が複数のルートで、次々と対応を求めた構図が証言や文書を通じて浮かんできた。
前川氏によると、木曽氏が文科省事務次官室を訪れたのは昨年8月下旬。前川氏は「獣医学部の件でよろしく、などと言われた」と証言した。自らも文科省OBの木曽氏は取材に、面会の事実は認めつつも、学部新設への「圧力」を否定した。ただ、自身が加計学園理事で、学園が運営する千葉科学大の学長でもあることから、獣医学部は「話題としては出ない方がおかしい」と語った。
この時期は、国家戦略特区での獣医学部新設をめぐり、特区を担当する内閣府文科省の担当者間で協議が続いていた。農林水産省などから新設に必要とされる獣医師の需給見通しが示されないとして、文科省は慎重姿勢を取っていた。
前川氏によると、木曽氏の訪問から間もない昨年9月上旬、前川氏は首相官邸に呼ばれた。地方創生などを担当する和泉洋人首相補佐官と面会し、獣医学部新設について「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」などと対応を求められたという。和泉氏は取材に「記録が残っておらず、確認できない」と答え、首相からの指示についても否定した。
民進党が国会に示し、朝日新聞も入手している8枚の文書によると、文科省の担当者は内閣府側から「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」などとも伝えられたとされる。前川氏は5月25日の記者会見でこれらの文書について、昨年9〜10月に「担当の専門教育課から報告を受けた際に受け取った」と語った。
文書をめぐっては、松野博一文科相が5月19日に「存在は確認できなかった」と発表。内閣府も内容を否定している。

■首相のブレーン役
首相のブレーン役とも呼ばれる内閣官房参与。任期はなく、報酬は日額で支払われているが、内閣官房内閣総務官室は「個人に関わる情報」として具体的な金額を明らかにしていない。
第2次安倍政権発足時は7人が任命され、現在は12人に拡充されている。小泉純一郎元首相の秘書官だった飯島勲氏(特命担当)、堺屋太一・元経済企画庁長官(成長戦略担当)、浜田宏一・米エール大名誉教授(国際金融担当)らが名を連ねる。
木曽功氏は国連教育科学文化機関(ユネスコ)大使を務めた経歴があることなどから、文化施策担当として2014年4月に内閣官房参与に任命された。
参与時代の15年7月、ユネスコは「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」を全会一致で世界文化遺産に登録することを決定。一部の炭鉱などで植民地時代に朝鮮半島出身者が動員された「徴用工」の説明をめぐって日韓が対立していたが、合意にこぎつけた。
一方、前川喜平氏との面会時、木曽氏は加計学園理事も務めていた。
自治省OBの片山善博総務相は「政権の中にいる内閣官房参与から『よろしく』と言われれば、官僚は圧力に感じる」と指摘。「参与と学園理事を兼ねるべきではない」と話す。
北川正恭・早稲田大名誉教授は「李下(りか)に冠を正さずの言葉どおり、利益誘導をしていると思われるようなことは慎まなければいけない」と語る。
人事院によると、国家公務員倫理規程には、内閣官房参与による省庁への働きかけを禁ずる定めはないという。