裁判員 増え続ける辞退 制度施行8年、長期審理敬遠か - 毎日新聞(2017年5月21日)

https://mainichi.jp/articles/20170521/k00/00m/040/091000c
http://archive.is/2017.05.21-012449/https://mainichi.jp/articles/20170521/k00/00m/040/091000c

21日に制度開始から8年を迎える裁判員裁判で、裁判員を辞退する人の割合(辞退率)や裁判員を決める選任手続きに欠席した人の割合(欠席率)が上昇している原因について、最高裁は「審理予定日数が長期化した点などが影響した可能性が高い」とする分析結果を公表した。分析を受け、最高裁は改善策の検討に乗り出す。【伊藤直孝】

裁判員候補者は、前年秋に作成された名簿を基に事件ごとに選定される。「調査票」「事前質問票」「選任手続き当日」と三つの過程で辞退が認められている。

最高裁によると、辞退率は2009年の53.1%が15年には64・9%に、欠席率も09年の16.1%が15年は32.5%に上昇。このため、最高裁は昨年から今年にかけて民間に委託し原因を分析した。

委託先からの報告書によると、裁判員裁判の平均審理予定日数は09年の3.4日が15年は6.1日に増加。審理予定日数が長い事件ほど辞退率・欠席率が高くなる傾向がみられた。また「制度に対する関心の低下」「非正規雇用の増加」なども影響した可能性があるとしている。

最高裁は、審理予定日数が増えた背景には、裁判員の負担を軽減するため、ゆとりを持って審理計画を組むようになったことや、裁判員と裁判官が有罪・無罪や量刑を話し合う「評議」の時間を長く取るようになったことがあるとみている。

最高裁の担当者は「審理予定日数の増加は必要性・合理性があり、一概に問題があるとは言えないが、日数の短縮とのバランスについて今後議論していきたい」としている。

東京地裁所長代行で、裁判員裁判の実務に詳しい三好幹夫・上智法科大学院教授は「裁判官は、真実の発見のためには時間がかかっても、当事者の主張を吟味するという旧来型の『精密司法』に陥りがちだ。しかし、そうすれば審理は長くなり、参加できる裁判員はごく一部に限られてしまう」と指摘。「争点を核心に絞って審理するという当初の理念に立ち返る必要がある」と話している。

また、裁判前に争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの期間も施行翌年(10年)の平均5.4カ月が昨年は8.2カ月に延びた。充実した審理と効率化の両立は制度全体の課題と言えそうだ。

裁判員裁判は今年3月までに計7万5827人が裁判員(うち補充裁判員は1万9253人)に選任され、被告9821人に判決が言い渡された。