裁判員候補、出席2割 選任手続き 制度形骸化の恐れ - 東京新聞(2018年11月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111102000164.html
https://megalodon.jp/2018-1111-1003-43/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111102000164.html


二〇〇九年に導入された裁判員制度で、裁判員を選ぶ手続きへの市民の出席率が下がり続けている。昨年一年間の裁判員候補者のうち、選任手続きに出席した人は約二割で、過去最低となった=図。裁判員制度の最大の理念は「市民参加」だが、来年五月の施行十年を前に、形骸化が懸念されている。
同制度では、有権者から無作為に選ばれた名簿登録者の中から、各裁判ごとにくじで選んだ候補者に「呼出状(よびだしじょう)」を送る。裁判所は国会議員など裁判員に就けない人を除き、辞退を希望しなかったり、辞退が認められなかった候補者を「選任手続期日」に呼び出す。この中から裁判員が決まる。
最高裁によると、一七年の裁判員候補者数は十二万百八十七人。このうち、選任手続きに出席した人は二万七千百五十二人で、出席率は22・6%だった。制度が始まった〇九年の40・3%から下がり続けている。期日前に「重要な仕事」などの理由で辞退する人も多く、一七年の裁判員候補者のうち辞退率は66・0%で過去最高。これも〇九年(53・1%)から増加傾向がある。呼出状が届かない人のほか、理由なく出席しない人もいるという。
背景には審理の長期化がある。最高裁によると、ゆとりを持ち審理計画を組むようになったことなどが影響し、裁判員裁判の平均日数は〇九年の三・七日に対し、一七年は一〇・六日に伸びた。同年の調査では審理予定日数が長いほど、辞退率が高い傾向があった。
白鴎大法学部の村岡啓一教授(刑事訴訟法)は「制度が始まって九年たっても関心が高まっていない。裁判員になることが義務という意識が薄らいでいる。事前に辞退を希望する候補者について、正当な理由かどうか裁判所が厳しくチェックしていないことも一因だ」と分析している。 (中山岳)