海外メディアが見る森友問題の“もうひとつの側面”。「日本会議と安倍政権の関係」と同じ文脈で注目すべき! - 週プレNews(2017年3月30日)

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─今、ヨーロッパでも極右政党が台頭したり、人種差別的な勢力が支持を広げたりといった流れがありますが、先日行なわれたオランダの総選挙では、移民排斥を訴える極右の自由党は結果的に政権を取れませんでした。いわゆる先進国のリーダーがこうした「極右思想」と近い関係にあるという例は、今のところはないですよね。

マッカリー 海外のメディアが森友学園に注目したのは、昨年、ロイター通信が塚本幼稚園で行なわれている「戦前回帰的な教育」の実態を紹介したことがきっかけでした。森友学園の問題は同じく昨年、海外の各メディアでも報道された「日本会議と安倍政権の関係」と同じ文脈で注目されているのだと思います。

つまり、もうひとつの側面を「日本の首相と極右思想の政治団体、その思想が色濃く反映された学校法人のつながり」という文脈で捉(とら)えると、今、日本で広がりつつある「戦前回帰」への流れと安倍政権がリンクしてくる。

ちなみに日本会議は、籠池氏はメンバーではないと言っているようですが、塚本幼稚園や籠池氏の語る教育方針は多くの部分で日本会議の教育に関する主張と重なっているし、大きな方向性という意味では、第一次安倍政権が打ち出した「教育改革」の方針とも重なる部分が少なくありません。

このように与党の党首が極右思想と近い関係にあり、その強い影響を受けた学校法人と近い関係にあったのだとすれば、その点はもっと議論されるべきでしょう。まだ何もわからない幼い子供たちに「安倍首相がんばれ!」と叫ばせたり、中国や韓国に対する差別的なイメージを押し付けたりする教育をしている幼稚園や学校があれば、普通は問題視されるはずで、一国の首相や政治家がそれを応援するなんて、普通に考えればあり得ないことです。

そうした人たちと政治の中枢が「近い場所」にいるということの意味を、この機会にもっと多くの人たちが考えたほうがいいと思います。

─今後、森友学園問題はどのような方向に進展すると思いますか?

マッカリー 繰り返しになりますが、土地取引への便宜供与について確かな証拠が出てこない限り、安倍政権が引っくり返ることはないと思います。しかし、依然として民進党をはじめ野党への支持は低いものの、この先、与党内の安倍政権に対する支持がこれまでのように盤石でいられるかどうかは疑問です。

自民党石破茂氏も、国有地払い下げ問題に関しては「野党に言われるまでもなく、政府・与党として解明すべきものだ」と述べています。

マッカリー 自民党は総裁の任期を従来の「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長しましたが、今回の問題をきっかけに政権支持率が下がるようなことになれば、党内に「この先も安倍政権のままではもたない」と考える勢力が出てきても不思議ではありません。長い間、高い支持率を維持してきた安倍政権ですが、党内での求心力が少しずつ失われるようなことになれば、なんらかの影響が出る可能性はあるでしょうね。
(取材・文/川喜田 研)

ジャスティン・マッカリー
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院で修士号を取得し、1992年に来日。英紙「ガーディアン」「オブザーバー」の日本・韓国特派員を務めるほかTVやラジオでも活躍