毎日新聞世論調査 森友問題、首相を直撃 国会審議瀬戸際 - 毎日新聞(2018年3月19日)

https://mainichi.jp/articles/20180319/k00/00m/010/149000c
http://archive.today/2018.03.19-001312/https://mainichi.jp/articles/20180319/k00/00m/010/149000c


毎日新聞の17、18両日の全国世論調査安倍内閣の支持率は33%に急落した。共同通信など他社の調査も同様の傾向を示し、政府・与党の危機感は強い。これまで支持率の「復元力」で政権を維持してきた安倍晋三首相だが、学校法人「森友学園」の問題は首相自身を直撃している。国会で十分に説明できなければ、秋の自民党総裁選の行方は一気に不透明になる。
「とても残念だ。深刻に受け止めている。信頼を回復するには、国民が納得できるような調査結果を麻生太郎副総理兼財務相が出すことだ」。野田聖子総務相は、支持率急落の最大の要因とみられている財務省の文書改ざん問題への明確な説明が必要だと強調した。
公明党山口那津男代表は「決裁文書の書き換え問題が影響していることは明らかだ」と指摘したうえで、「厳しい結果で、政府・与党は真摯(しんし)に受け止め、誠実に対応していかなければならない」と語り、国民への説明に尽力する必要があるとの認識を示した。
首相官邸の幹部は「大変だ。財務省がなぜ隠したのか昨年の段階で本当の事を全て明らかにすべきだった」と漏らした。
首相は第2次政権発足時から政権を支えてきた麻生氏を守る姿勢を崩していないが、今回の調査で麻生氏は「辞任すべきだ」と答えた人は54%と過半数だった。
責任の所在については、安倍首相に「責任がある」との回答が68%に上っており、文書改ざんは財務省の問題にとどまらず、首相を直撃する問題であることが数字でも裏付けられた形だ。
当面は19日の参院予算委員会の集中審議や国有財産管理の担当局長だった佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問などを通じて、どこまで問題の核心が明らかになるかが焦点となる。
財務省はこれまでの審議で、改ざん事実について、佐川氏は「知っていた」と説明した。また、「政府全体の答弁は気にしていた」と首相の答弁などが影響を及ぼした可能性を否定しなかった。
決裁文書の改ざんは誰の指示で、なぜ起きたかについて、新たな説明がなければ、政府はさらに厳しい立場に追い込まれることになりそうだ。
一方、野党側は森友学園の前理事長夫妻と親交があった首相の妻昭恵氏の国会への招致を求める姿勢を強めている。毎日新聞の調査で、昭恵氏を国会に「招致すべきだ」と答えたのは63%と、昭恵氏の説明に国民が高い関心を持っていることが浮き彫りになった。首相は、自身や昭恵氏が森友学園への国有地売却に関与した疑惑を否定しているが、希望の党玉木雄一郎代表は「(支持率低下は)国民の不信感の表れだ。佐川氏だけではなく昭恵氏の証人喚問が必要というのも国民の声だ」と語った。
立憲民主党福山哲郎幹事長は18日のフジテレビの番組で昭恵氏については「秘書(昭恵氏付政府職員)が財務省に問い合わせまでしていた。(前理事長の)籠池泰典氏との証言が食い違っているので、国会に出てくれば国民の疑惑が晴れるのではないか」と述べ、昭恵氏の国会招致を求めた。福山氏は、学園側との土地売買交渉時に財務省理財局長だった迫田英典氏の証人喚問が必要とも主張。同番組で共産党小池晃書記局長は、昭恵氏付だった政府職員の招致も求めた。【田中裕之、遠藤修平】

支持率反転の材料なく
安倍内閣の支持率が不支持率を下回った例は過去にもある。昨年6月調査では、学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題や、「共謀罪」法を巡る与党の強引な国会運営で支持率が10ポイント下落。自民党が惨敗した東京都議選をはさんで7月には26%まで落ち込んだ。集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制に批判が高まった2015年7月から10月にかけても支持率は30%台で推移した。
ただ、いずれもその後に支持率は回復した。昨年の衆院選前に結成された希望の党が、当時代表だった小池百合子都知事の不用意な言動であっけなく失速したように、野党の力不足に助けられた面はあるにせよ、安倍内閣は一定の危機管理能力を発揮したといえる。
今回、ある程度の下落は政権内で織り込み済みだったとはいえ、18日までの毎日新聞朝日新聞日本テレビなどの調査結果をみると、財務省が決裁文書14件の書き換えを国会に報告した12日以降、政権への逆風が強まったことがわかる。自民党内では「これまで野党の自滅で目立たなかったが、安倍政権はゆっくり下り坂だ。もう旬は過ぎた」という声も出始めた。
確かに、反転攻勢の材料は乏しい。首相が今国会で目玉にしようとした働き方改革関連法案は、厚生労働省の不適切なデータ比較が発覚し、経済界が期待していた裁量労働制の対象拡大をあきらめざるを得なくなった。法案は閣議決定すらできていない。
首相は昨年10月に衆院選に踏み切ったばかりで、局面打開のための解散も打ちにくい。自民党は依然、支持率で野党を大きくリードしており、同党のベテラン議員は「反省すべきは党ではなく安倍さんだ」と首相の求心力低下を指摘する。
米国、韓国が北朝鮮との首脳会談に乗り出すのに合わせて、首相が日朝首脳会談を探るのではないかという観測もあるが、野党は「『困ったときの北朝鮮』は国民に見透かされる」(共産党幹部)と冷ややかだ。
「麻生財務相を守ろうとするほど政権のダメージになる」(与党幹部)としても、首相は盟友の麻生氏を簡単に辞任させられない。党内第2派閥の麻生派から首相に不満が出たら、総裁選での3選戦略に影響するためだ。しかし、総裁選を乗り切っても来年は統一地方選参院選が控える。党重鎮は「選挙がまずいという雰囲気になれば、党内に動きが出てくるだろう」と予測する。【高橋恵子、松倉佑輔】