(余録)カナダの民間団体で… - 毎日新聞(2017年3月4日)

 
http://mainichi.jp/articles/20170304/ddm/001/070/080000c
http://archive.is/2017.03.04-115245/http://mainichi.jp/articles/20170304/ddm/001/070/080000c

カナダの民間団体で難民の受け入れや定住を長く手助けしてきた獣医のマルティン・マルクさん(55)は、難民を「新しい来訪者(newcomers)」と呼んで歓迎する。カナダは昨年約4万人のシリア難民を受け入れたが、3分の1以上を政府でなく民間が主導した。
マルクさんも直接難民キャンプに出向いて希望者と会い、数年かけて学校や職場などの受け入れ準備をした。いよいよカナダの空港に着いた難民を出迎える時の感激はひとしおだという。
先日東京都内で講演したマルクさんは「なぜそこまで」という会場からの質問に「難民キャンプで会った人たちが自立して人生が変わっていくのを目の当たりにするとやみつきになります」と答えた。
カナダは年約30万人の移民を受け入れ、国家元首の職務を行う総督に元ハイチ難民が就任したこともある。難民を迎えるのは当たり前というお国柄なのだろう。とはいえ同じ移民国家の米国や欧州で移民や難民を排斥する風潮が強まっていることを考えれば一目置きたくなる。
先進的なカナダでも民間の活動が始まったのは1978年のインドシナ難民受け入れからだ。日本政府はこの時に初めてインドシナ難民を受け入れ、その後難民条約にも加盟した。だがいまだに「難民鎖国」と言われている。
カナダの経験を学んだ日本のNPO「難民支援協会」は4月、国内の日本語学校と協力してまず6人のシリア難民を留学生として受け入れる。マルクさんは「少人数から始めて少しずつ受け入れ能力を高めていくことが大切」とアドバイスする。日本で初めて民間が主導する小さな一歩を応援したい。