共謀罪と与党 許されぬ「了承ありき」 - 朝日新聞(2017年3月4日)

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重大犯罪が実際に行われなくても、共謀の段階で処罰できるようにする法律の政府原案が、自民、公明両党に示された。
政府はこれまで、案が固まっていないことを理由に、野党やメディアの質問の多くに回答を拒んできた。もはやそのような逃げの姿勢は通用しない。
確認したいことはたくさんある。たとえば共謀罪が導入される犯罪の種別と数だ。
組織犯罪防止の国際条約に加盟するには、重大犯罪のすべてに共謀罪を設ける必要があると政府は主張してきた。その数は670を超すはずだが、原案では277になっている。過去の閣議決定や答弁との整合性について明確な説明が必要だ。
取り締まりの対象となる組織の定義も問題をはらむ。
かつて国会に提出された共謀罪法案をめぐっては、市民団体や労組の構成員も摘発されるおそれがあるとの指摘があった。そこで政府は、「重大な犯罪の実行を目的とする組織的犯罪集団」との要件を追加し、不安の解消を図ったと説明する。一方で、正当な活動をしていた団体でも性格が一変すれば、当然、対象になるという。
問題は「一変」と判断する根拠であり、その証拠をいつ、どうやって集め、捜索などの令状を出す裁判所に説明するかだ。ここがあいまいなため、ふつうの人にも幅広く監視の網がかかることに変わりはないとの批判が出ている。しかし金田法相は「捜査を始める時期は一概に言えない。疑いの程度次第だ」という答えに終始している。
性格が一変した例として首相が挙げるのがオウム真理教だ。
ならば、ヨガのサークルから始まった集団の性格が変わったと認定できるのは、ふり返ってどの時点か。いかなる証拠や事実からそう判断できるのか。あるいは最後まで認定は難しいのか。新法の下ではどんな展開があり得るのか――などを、具体的に説明してもらいたい。
法相の答弁は、要は当局を信用せよと言っているだけだ。
だが、犯罪の疑いのある人物の自動車にGPS端末を勝手に装着して行動を監視し、その行為が発覚してもシラを切り通したり、労組などが入る建物の前に監視カメラを取りつけたりする警察である。恣意(しい)的な運用はあり得ないと言われても説得力を欠く。検察についても、証拠を改ざんしてまで有罪をとろうとした事件は記憶に新しい。
自公両党には、自分の言葉で国民にしっかり説明できるだけの審査をする責任がある。「了承ありき」は許されない。