「人を簡単に殺す、それが戦争」 益川さんと秩父の高校生らが対談:埼玉 - 東京新聞(2017年2月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201702/CK2017021702000197.html
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ノーベル物理学賞を受賞した名古屋大特別教授の益川敏英さん(77)と、秩父地域の高校生たちの対談が、横瀬町の町民会館ホールであった。幼少期に太平洋戦争を経験した益川さんに、若者たちが研究や戦争、平和について活発に質問。約二百五十人の観客とともに今後の平和のありようを考えた。 (出来田敬司)
対談は、秩父地域で国際交流や平和活動を進める市民団体「秩父ユネスコ協会」が主催。秩父、皆野、秩父農工科学、自由の森学園の四校十二人が壇上で質問した。
冒頭、ノーベル賞の晩さん会の食事について問われた益川さんは「私はあまり食べることに興味はないが、トナカイの肉はおいしくいただいた」と吐露し、聴衆を笑わせた。
戦争体験に関する質問には「名古屋の自宅に流れ弾が降ってきた。不発弾だったが、爆発すれば大やけどしたか死んでいたかもしれない」と告白。「その後も朝鮮戦争インドシナ戦争の報道に触れ、戦争について考えてきた」と話した。
さらに、イラク戦争で米軍の女性兵士が捕虜の男性を裸にするなど虐待をした事件に言及し、「虫一匹殺せないような人が簡単に引き金を引ける。戦争とはそういう集団ヒステリー。絶対にあってはならない」と力を込めた。
第三次世界大戦が起きる可能性を問われると「大国は戦争の痛みを知っており、恐らく起きないだろう。ただ発展途上国が最終手段で武力を使う可能性はある。窮地に陥れることはしてはならない」と述べた。
戦争を知らない世代に向けてのメッセージとして、「私は素粒子を見たことがないが、存在するとは言える。戦争を体験していなくても、理性的に勉強すれば理解できる」と述べ、戦争を知ろうとする大切さを説いた。
会場では、対談のほかにも旧満州中国東北部)での極限生活や広島の被爆を題材にした朗読劇が披露され、高校生や観客らが平和の尊さをあらためて問い直していた。
対談に臨んだ皆野高二年の岡明音(あかね)さん(16)=深谷市岡部=は「飛行機から不発弾が落ちてきた話が印象に残った。戦争についてある程度分かっていたつもりだが、学ぶことはまだまだたくさんあると感じた」と話した。