天皇退位 容認9人、慎重・反対7人 専門家16人の意見聴取終了 - 東京新聞(2016年11月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201611/CK2016113002000241.html
http://megalodon.jp/2016-1130-2258-36/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201611/CK2016113002000241.html

天皇陛下の退位を巡る政府の有識者会議(座長・今井敬経団連名誉会長)は三十日午前、第五回会合を首相官邸で開いた。この日意見聴取した専門家五人のうち、退位を四人が賛成・容認し、一人が反対を表明した。この結果、三回の意見聴取に出席した十六人のうち、条件付きを含めて九人が賛成・容認、七人が慎重・反対となった。有識者会議は今後、論点整理に入る。
この日の意見聴取では、八木秀次・麗沢大教授が、憲法にある天皇の国事行為を代わりに担う臨時代行の規定により、陛下の負担軽減は可能とし「退位を強行すれば、憲法上問題のある退位となる」と指摘。退位を認める立法は「特別法だろうが皇室典範改正だろうが無理筋だ」と反対した。
百地(ももち)章・国士舘大大学院客員教授は「超高齢化社会の到来に伴い、例外的に譲位を認めることはあってもいいのではないか」と容認する姿勢を示した。恣意(しい)的な退位を防ぐため、退位の客観的条件を特別法で定めることを提案した。
大石真・京都大大学院教授は退位を容認し、皇室典範改正で恒久的な制度とするよう求めた。
高橋和之・東京大名誉教授は、退位の是非について「国民が決めること」と判断を避けた。退位の立法化は「憲法上、禁止されていない」と、皇室典範改正や現在の陛下のみに適用する特別法制定での対応は可能とする見解を示した。
園部逸夫・元最高裁判事は退位を認める立場を表明した上で「皇室典範の改正には相当時間がかかる」とし、特別法制定を訴えた。
意見聴取を受け、有識者会議は論点整理を年内に取りまとめ、年明けにも公表する見通し。
意見聴取は、国民の幅広い意見を集約するため、皇室の歴史や制度、憲法などに詳しい専門家を選定して開催。過去二回の聴取では退位に関して、十一人のうち五人が条件付きを含め容認、六人が慎重・反対だった。有識者会議の御厨貴(みくりやたかし)座長代理は三十日の意見聴取後の記者会見で「賛成、反対は何対何という受け取り方はしていない」と述べた。

◆専門家16人 天皇退位への賛否
【賛成・容認】(9人)
古川隆久・日本大教授▽保阪正康(作家)▽所功京都産業大名誉教授)▽岩井克己(ジャーナリスト)▽石原信雄・元内閣官房副長官百地章国士舘大大学院客員教授▽大石真・京都大大学院教授▽高橋和之・東京大名誉教授▽園部逸夫・元最高裁判事

【反対・慎重】(7人)
平川祐弘・東京大名誉教授▽大原康男国学院大名誉教授▽渡部昇一上智大名誉教授▽笠原英彦・慶応大教授▽桜井よしこ(ジャーナリスト)▽今谷明帝京大特任教授▽八木秀次・麗沢大教授 =敬称略

<お断り> 天皇陛下が地位を退かれることについて「生前退位」の表現を使ってきましたが、今後は原則として「退位」とします。存命中の退位は明治以降に例がないため使ってきましたが、国民の理解が進んだと判断したからです。発言の引用などでは、必要に応じて「生前退位」や「譲位」を使うこともあります。