http://mainichi.jp/articles/20161129/ddm/001/070/119000c
http://megalodon.jp/2016-1129-0908-34/mainichi.jp/articles/20161129/ddm/001/070/119000c
北海道・夕張の炭鉱住宅で黄色いハンカチが連なって風にはためく。映画「幸福の黄色いハンカチ」の印象深いラストシーンだ。事件を起こして服役した主人公の男を大切な人が待っていてくれた。約束の黄色いハンカチを目にした高倉健の表情は忘れがたい。
健さんが83歳で亡くなってから2年になる。全国を巡回する追悼特別展が始まった。最後の作品となった「あなたへ」では北陸の刑務所の指導技官を演じた。日本侠客(きょうかく)伝、網走番外地、昭和残侠伝……。この人ほど刑務所に縁のある役を演じた俳優はいないだろう。
この秋、恒例の「東京拘置所矯正展」が東京・小菅で開かれた。全国の刑務所の受刑者たちが作った家具や美術品、日用品を展示し、販売する場だ。各地にも同様の催しがある。受刑者らの更生への取り組みについて理解を深めてもらうのが目的だ。
その中に富山刑務所のコーナーがあった。立派な神輿(みこし)が黄金色に輝いている。指導したのは、健さんが演じたような刑務官だ。販売の担当者は「刑務官は手助けしてはならないルールで、すべて受刑者の手作りです。培った技術を生かし、人生をやり直してほしい」と言う。
健さんは「あなたへ」のロケ地である富山刑務所を慰問している。約400人の受刑者に語りかけた。「一日も早く社会復帰して、あなたを待っている大切な人のもとに帰ってください」。本人も受刑者も涙ぐんだ。神輿を作った受刑者もその中にいたかもしれない。
黄色いハンカチが空にはためけば、人はいつからでもやり直せる。それは受刑者ばかりではない。名優は今もそう伝えてくれている気がする。