TPP採決でお払い箱 舌禍の山本農相“11月9日辞任”シナリオ - 日刊ゲンダイ(2016年11月4日)

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山本有二農相の失言連発でTPP国会は大荒れになっている。野党は辞任するまで審議に応じない方針だ。担当閣僚でありながら国会を紛糾させた山本大臣にカンカンの安倍官邸は、早くも更迭シナリオを練り始めているという。
「山本大臣は先月中旬、“強行採決発言”で野党の猛反発を買ったばかり。それがようやくおさまったかと思ったら、今度は『冗談を言ってクビになりそうになった』とオチャラケ発言です。しかも、『JAの方々は農水省に来てくれれば、何かいいことがあるかもしれない』とかつて自民党の大物大臣が糾弾された“手心発言”みたいな言葉まで口にする始末。1度ならず2度だから野党が怒るのも当然です。自民党内からも『もうかばえない』と批判の声が上がり始めています」(自民党関係者)
山本大臣は「ご迷惑を掛けております」とピョコンと頭を下げただけ。菅官房長官は「辞任するような話ではない」と表向き擁護しているが、安倍官邸は来週にも辞任させるつもりだという。

■自民も民進も好都合
「野党の辞任要求は当然でしょう。自民党内もなかば辞任は仕方ないと受け止めているはずです。ただ、今すぐ山本大臣を辞任させると、新大臣の所信表明などに時間を取られ、TPP承認案の衆院通過が大幅に遅れる可能性が出てきます。来週には衆院本会議で採決したい安倍官邸はその事態は避けたいはずです」(政治評論家の伊藤達美氏)
そこで今、官邸周辺で囁かれているシナリオは(1)8日の衆院採決(2)9日の山本農相辞任(3)10日に新任大臣就任だという。これが自民党にとっても、民進党にとってもベストのシナリオらしい。
「安倍首相はとにかく8日の米大統領選までにTPP承認案を衆院通過させたい。オバマ政権の任期中に米国の承認手続きを後押ししたいからです。承認案は条約のため、憲法に基づく“30日ルール”による自然成立が可能です。衆院を通過させてしまえば、参院は強引にやる必要はない。8日に採決すれば国会は1週間の小幅延長で済みます」(永田町関係者)
8日の衆院通過後、すぐさま山本大臣を解任すれば野党も“閣僚のクビをとった”と顔が立ち、新任大臣のもとスンナリ参院で審議ができる、ということらしい。逆に10日まで山本大臣の進退を引っ張ると、大モメの材料になりかねない。
山本大臣をめぐっては、新たなスキャンダルが飛び出すという話もある。その前に山本大臣をクビにして、国会を正常化させるのが得策だと官邸も計算しているようだ。しかし、問題大臣のクビ一つでTPPが承認なんて許されない話だ。