(私説・論説室から)「意義のある活動」困難に - 東京新聞(2016年10月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016103102000184.html
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南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣される陸上自衛隊の訓練が公開された。安全保障関連法にもとづく「駆け付け警護」「宿営地の共同防衛」とも武器を使うことなく終わり、武器使用を含む新任務の全容が明らかにされることはなかった。
「おや?」と思ったのは道路補修の訓練だ。武器を構えた隊員たちが道路をならす重機の周囲で警戒している。二〇一二年七月、南スーダンで空港、国連施設、市街地の三カ所で道路補修する自衛隊を取材したが、このような緊迫した場面はなかった。
南スーダンでは一三年十二月、武力衝突があり、今年七月にも繰り返された。PKO部隊さえ危険にさらされ、警戒しながら行うほかない道路補修とすれば、これが日本政府のいう「意義のある活動」なのだろうか。
現地は十一月には雨期が明ける。自衛隊が補修する道路は生活の利便性を高めるだけでなく、武装集団の移動を助けることにもなる。平和維持のための活動が平和破壊の手助けになるなら、本末転倒だろう。
安倍晋三首相は「積極的平和主義」を打ち出しているが、日本がPKOに部隊派遣しているのは南スーダンだけ。安保法も当面、南スーダンで適用するほかない。そこで新任務というわけか。
この政権でなければ、撤収を含む別の判断が下せたのではないだろうか。 (半田滋)