軍事研究助成の新設枠を検討 1件数十億円に上限拡大 - 東京新聞(2016年9月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016092602000128.html
http://megalodon.jp/2016-0926-0936-02/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016092602000128.html

軍事転用可能な基礎研究の資金を助成する「安全保障技術研究推進制度」で、防衛省が一件の研究への助成額上限を、現行の十倍超の数十億円へ引き上げることを検討していることが分かった。武器や装備品に必要な技術研究開発を進める政府方針の下、現行制度ではカバーできない高額な予算が必要な研究をする大学や研究機関の取り込みを図る。 (望月衣塑子)
この動きに、軍学共同や沖縄基地問題で発言している世界平和アピール七人委員会の委員も務める慶応大の小沼通二(みちじ)名誉教授(物理学)は「軍学共同をさらに前進させるもので、平和を追求すべき科学者のあり方をゆがめる」と懸念する。
二〇一五年度に始まった技術研究推進制度にはこれまで百五十三件の応募があり、十九件の研究が採択された。いずれも助成の上限は三年間で一億二千万円。防衛省は来年度、この助成枠と別に、一件の研究に五年間で数十億円をつぎ込む新たな助成枠を設ける方針だ。来年度予算では制度全体で百十億円を要求し、このうち新設分として五年分の百億円を一括計上している。
防衛省は、大きな予算が必要なレーダーなどの基礎研究に取り組む大学や研究機関の研究者からの応募を見込む。原則五年の助成期間中に得られた研究成果をさらに発展させ、再び応募することも可能で、採択されればさらに五年間の助成を受けられる。防衛装備庁は「長期契約でより高度な先端技術を防衛装備品に取り込みたい」とする。
政府は今年一月にまとめた第五期科学技術基本計画で、安全保障の項目を初めて設け「安全保障上の諸課題に対し、必要な技術の研究開発を推進する」と明記。大学や民間の技術の防衛装備への積極的な転用を目指す。
技術研究推進制度への応募は初年度百九件から、二年目の本年度は四十四件に減った。小沼名誉教授はその背景として「政府の軍備拡張路線に反対する研究者が増えている」と指摘。「研究者に膨大な資金を見せて巻き込もうとする政府のあざとさを感じる。軍備拡張を進める政策に日本の未来はあるのか」と話す。
宇宙物理学者の池内了(さとる)名古屋大名誉教授も「来年度の防衛省の予算要求を見ると、防衛装備庁は中長期的な観点から軍事装備品の開発に乗り出している。助成金制度の拡充は、それに合わせ軍事装備の開発を本格的に進める体制づくりの一環だ」と批判している。