<伊方原発>もろい地盤、避難路不安 12日再稼働 - 毎日新聞(2016年8月11日)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160811-00000025-mai-sctch
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12日にも再稼働する四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)は佐田岬半島の付け根に立地し、加えて半島の地盤のもろさから地震津波に伴う過酷事故時に道路が使えなくなる不安が残る。半島は延長約40キロ、最小幅800メートルで「日本一細長い」。先端側の住民約4700人が孤立した場合、海路や空路で大分県などへの広域避難を計画しているが、他県も地震などで同時被災していると「自県優先」の立場をとる方針で、愛媛県だけでの対応を迫られる恐れもある。
半島は変成岩が多いのが特徴で、長谷川修一・香川大工学部教授(地質工学)によると、過去に地すべりを起こしたり、風化で岩盤がもろくなったりしているところがあるという。避難路として想定されている国道197号名取トンネル(640メートル)では地滑りによる崩壊の恐れが2005年に判明し、県が代替トンネルの建設を余儀なくされた。
3号機の西約10キロの塩成(しおなし)地区。今年7月ごろ、町道の至る所にひび割れや傾斜ができ、顕著な地点では、路肩が約100メートルにわたって最大数十センチ陥没した。地盤のもろさに加え、梅雨の大雨が影響したとみられる。町内にはこのような「地すべり危険箇所」が64カ所あり、現在10カ所程度で通行障害が起きている。
陥没した町道を利用する民宿経営の阿部軍治さん(79)は「熊本地震のような揺れが来たら迂回(うかい)路も崩落する。集落は孤立だ」と顔を曇らせる。別の男性(71)も「再稼働しないのが一番安心」と話す。
愛媛県原子力安全対策課は今年7月に改定した避難計画で、陸路が使えない場合は空路・海路による大分県側への避難や、屋内退避など複数の避難方法を想定する。
東京電力福島第1原発事故では、福島県の住民の多くが他県へ避難した。過酷事故時には放射性物質が広域に飛散する可能性があるからだ。ところが避難計画で具体的に避難先として挙げられた大分県は「(地震などで同時に被災した場合)まずは自県の住民が最優先。愛媛の住民については可能な範囲で受け入れる」とする。愛媛県は大分が受け入れ困難となった場合のバックアップとして山口県への避難も想定するが、山口も「同時被災すれば自県の対応が最優先」と同様の姿勢を示している。
愛媛県は、他県も同時被災した場合に備え、海路による松山市などへの避難も加えた。県原子力安全対策課の担当者は「県内も含め多重的に避難先を盛り込んだ」とするが、計画の実効性は不透明だ。
事故に伴う放射性物質の飛散に備えたヨウ素剤の配布も進んでいない。対象は原発の半径5キロ圏の住民5230人だが、配布率は6月末時点で76%。町はダイレクトメールなどで促すものの100%のめどは立たない。
住民説明会も開催されないまま再稼働を迎える。山下和彦町長(入院中で副町長が職務代理者)が「町民の声は日ごろから聞いている」として説明会の開催を拒んできたためだ。【鳥井真平、渕脇直樹】


路肩が大きく陥没した町道原発事故時の避難路だが地盤が弱く、崩落の恐れがある=愛媛県伊方町塩成で、渕脇直樹撮影